ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?2

[著者:新八角/イラスト:ちょこ庵/電撃文庫]★★

 薬物に頼らなければならない場面で、服用してし
っかり幻覚に踊らされ、その最中での描写の仕掛け
に「あれっ?」と思わせておいてからの、過去回想
に自然に迷い込ませる。この辺りの流れがとても素
晴らしかったです。ウカとリコの初めての出逢いの
場面は、特に見てみたい部分でもあったので。リコ
が途中で吐いていた「オレがウカに雇われているん
だ」みたいな台詞、最後の回想シーンでそこに込め
られた気持ちをようやく理解する事が出来ました。
 ウカの方もただひたすらにリコだけを欲する。リ
コが放ったたった一言が無価値なウカの行為に大き
な価値を持たせてくれた。何気ない『おいしい』を
受け取った時の気持ちも印象に残るものでした。

既刊感想:

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王

[著者:一ツ屋赤彦/イラスト:紅緒/角川スニーカー文庫]★★

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

葡萄大陸物語 野良猫姫と言葉渡しの王 (角川スニーカー文庫)

 第24回スニーカー大賞『金賞』受賞作。

 言語の壁が想像以上の高さで立ちはだかる、国が
違い、種族が違えば、当然ながら話す言葉も違って
来る。その当然のようでいて案外見落としがちな事
を気付かされる。通じない者同士の橋渡し役、多言
語を扱う翻訳家のような役回り、意思疎通により異
種族間の理解を深め、共闘を結び付けるに至ったメ
ルの功績は非常に大きなものだったと思います。
 一方で、バツ国との戦闘状態に突入してからは、
ギンの知略、シャルネのカリスマ、キリンの武力な
どが突出していて、メルが新王としての資質を充分
に示せたかと言うと、微妙な所だったかも。多言語
理解能力も戦火の真っ只中では使い所が難しそうだ
し、この辺りは本領発揮とは行かなかったかなあ。

所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由

[著者:五木友人/イラスト:Nardack/角川スニーカー文庫]★★

 第24回スニーカー大賞『金賞』受賞作。

 貧乏生活を目一杯楽しんでいる。家系のせいでこ
うなってしまったのを恨む事も憎む事も無く、むし
ろこれこそが俺の日常、俺の当り前、とばかりに前
向きに貧乏を満喫している。こんな風に言うと妙な
表現になってしまいますが、清太郎が自身の現状に
不満を漏らす事も少ないので、他に言い様も無い。
 恵拏俚による貧乏神憑依期間が終わってしまった
ら、もしかしたら極貧じゃない自分が物足りなくな
ったり、してしまうかも? それはそれでヤバいの
か。期限が延びたらしいのでおそらく当分は現状維
持でしょうけど。別に貧乏でなくても驚異的な身体
能力は維持出来そうだし……でも、貧乏神状態の恵
拏俚だから能力発揮出来ている所もあるのかなあ。

ミリオン・クラウン4

[著者:竜ノ湖太郎/イラスト:焦茶/角川スニーカー文庫]★★★

ミリオン・クラウン4 (角川スニーカー文庫)

ミリオン・クラウン4 (角川スニーカー文庫)

 『大山祇命』殲滅の為に起こした行動の全てが上
手く噛み合った、これ以上ない絶妙のバランスで成
立してくれた、奇跡のような結末。三勢力合同戦線
の連携、一真や那姫、極東・中華・シャンバラ各人
の動向、敵方である大山祇命やジャバウヴォックの
動向、その他戦況に影響を与えた数え切れない程の
動き。そのどれか一つでも致命的なズレが生じてい
たら、きっとこの結末に辿り着けてはいなかった。
 とにかく無謀な状況の連発で、終始息が詰まる内
容でした。人類勝利を願っていても、本当に最後の
最後までどうなるか……特に三四の扱いに関しては
ね。まあ何にしても疲れた。その疲れが心地良さに
変わってくれたのは、本当に最後の最後でしたね。

既刊感想:

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 10.嵐の後、嵐の前

[著者:海道左近/イラスト:タイキ/HJ文庫]★★

 久々に現実世界の大学生の椋鳥玲二を見た。でも
描写はほんの一時だった。結局現実でもデンドロに
没頭してるのを再確認出来ただけで、生活基準をデ
ンドロプレイ最優先に設定してる辺り、重度の依存
症の域なんじゃないか? 現実の生活を疎かにしな
い、と意識して気を付けてはいるみたいですが。
 玲二を含めてプレイヤーの集団的依存症みたいな
状況が、例えば現実とゲームの境界線が曖昧になっ
て何らかの重大な支障が発生するとか、そう言うの
でなければ良いんですけど。その辺り少々心配。
 今回はレイの激闘も一段落の各所エピソード集み
たいな内容。とは言え、超級の変人達が騒動を起こ
してばかりで全く落ち着いてませんでしたけどね。

既刊感想: