SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~2

[著者:甘岸久弥/イラスト:景/MFブックス]★★

 水虫の脅威を思い知る。話の広がりの発端が水虫
だと何となく脱力感も否めませんでしたが、徐々に
ダリヤ個人の手では抱え切れない話の広がり具合を
目の当たりにして、「水虫、ヤバい?」と考え直さ
ずにはいられませんでした。ダリヤがヴォルフに託
した試作品に関しても、魔力が込められているとは
言え、所詮『5本指ソックス』と『足蒸れ防止の靴
の中敷き』だしなあ……って正直大分ナメた見方し
てました。世の中何が当たるか分かりませんね。
 前までは婚約解消のいざこざがあってそっちに掛
かり切りでしたが、今回のダリヤは魔導具師として
の商品開発に商会長としての商品の売り込みなど、
本業に目一杯情熱を注げていたなって印象でした。

既刊感想:

魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~1

[著者:甘岸久弥/イラスト:景/MFブックス]★★★

 恋愛感情を抜きにした、男女間の友情や友人関係
は果たして成立するのか? ダリヤとヴォルフを見
て思いました。実際の所、もう既に成立してないん
ですけどね。多分ダリヤの友人関係でありたい気持
ちは本心、でもヴォルフの方はおそらくそうじゃな
い。女性関係で一方的に不幸な目に合っていたから
そう言う友人関係を憧れに近い形で欲していただけ
で、ダリヤに対してはどう見てもそれ以上の視線を
向けているでしょう。むしろ「そうであってくれ」
って気持ちが大きいんですけど、その辺ダリヤとの
温度差はありそうな気もするしなあって感じです。
 あとはクズ野郎が余計な暴走しないか不安でした
が、最後は大人しく引いてくれてホッとしました。

撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろII ―弾丸魔法とゴースト・プログラム―

[著者:上川景/イラスト:TEDDY/富士見ファンタジア文庫]★★

 謎が謎を呼び混迷を極める、みたいな。元々エア
が亡霊にされた事や、東西で戦争している根本の原
因とか、分からない要因があまりにも多い。むしろ
明確な事実の方が少な過ぎる感じで、レインとエア
が追う全く存在が知れない裏で糸を引いている“黒
幕”の信憑性が俄然高まったような印象でした。
 レインの悪魔の弾丸の『再編成』を用いて彼の望
む形で最大限の効果を上げるとするならば、元凶で
ある存在を撃ち抜く事か。とは言え、現状そんな人
物が居るかすら定かではないんですけどね。この結
末に関してもレイン同様疑問だらけで、少なくとも
好転しなかった点は、今後悪魔の弾丸の力を行使す
る際に躊躇いを生んでしまいそうな気もします。

既刊感想:

撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ ―弾丸魔法とゴースト・プログラム―

[著者:上川景/イラスト:TEDDY/富士見ファンタジア文庫]★★

 第31回ファンタジア大賞『大賞』受賞作。

 悪魔の弾丸の力を与える代わりにお前の全てを寄
越せ、と言う交換条件。終盤のエアの言動などに触
れてみた印象では、レインを躊躇いなく操り人形の
様に扱いそうでいて、その実窮地に追い込まれて尚
躊躇いを見せてしまう。正確には、これまでやむを
得ず散々強制力を行使して来た中で、初めて“無理
矢理傀儡にしなくていいかも知れない”相手に出逢
えた、それがレインだった、だから歯止めをかけて
しまった、と。レインが自主的に「俺を操れ」と望
んでも、エアが自身にそうはさせない、まだ出逢っ
て間もないですが、そんな関係性が続いて欲しい。
 あとはエピローグで不穏な空気が……彼女が介入
してきた事が物語にどう影響を及ぼすでしょうか。

女王の化粧師

[著者:千花鶏/イラスト:起家一子/ビーズログ文庫]★★

女王の化粧師 (ビーズログ文庫)

女王の化粧師 (ビーズログ文庫)

 化粧について。主人公のダイが語る本質であった
り信念であったり、その辺りは時代背景は異なれど
も現実と通じる部分もあるのかなあ。しかしプロの
職人が懇切丁寧に理解してもらおうと接してみても
聞いて欲しい相手にサッパリ通じない、聞く耳持っ
てくれないとなると、途方に暮れてしまうのも当然
の事で。マリアージュが卓越した技術を“宝の持ち
腐れ”状態にしてしまっているのが何とも歯痒い。
 最初に「ダメだこりゃ」と思わされる人も徐々に
改善して行くものなんですけど、マリアージュの場
合ダイへの接し方で逆に格が落ちる一方でもうお手
上げ。強烈に自身に劣等感を抱いているようで、ダ
イの化粧の力で何とか払拭して欲しい所ですね。