SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

りゅうおうのおしごと!9

[著者:白鳥士郎/イラスト:しらび/GA文庫]★★★

 競技においての『一強』。誰の追随も許さず、常
に同じ結果を叩き出し、それをひたすらに積み重ね
て行く。女流棋士界の銀子の立場。「自分の居場所
はここじゃない」とばかりに強さを貪欲に追い求め
てより高みを目指す、その結果としてあまりに強過
ぎるが故に場が盛り上がらずに冷め切ってしまう。
 本来なら天衣の成長を描いたものがメインのエピ
ソードなので、そちらを気にして触れるべき所なの
ですが。天衣が覚醒するのに合わせて、銀子の異次
元の強さが際立って見えてしまって、その言葉で言
い表し難い“危うさ”みたいなものが非常に気にな
ってしまいました。終局の後の両者様子を見ても、
どっちが勝者なのか分からない程でしたからね。

既刊感想:

アヤカシ・ヴァリエイション

[著者:三雲岳斗/イラスト:沙汰/LINE文庫]★★

アヤカシ・ヴァリエイション (LINE文庫)

アヤカシ・ヴァリエイション (LINE文庫)

 自分の出生とか性質とかに秘密めいたものがあっ
て、でも自分では何が原因でそうなってしまったの
か全く理解出来ないでいて、そんな状況で妙な騒動
に巻き込まれてしまったら、果たして自発的かつ積
極的に行動を起こせるかどうか。晴の場合は理解す
る為の受け身の姿勢と言う感じで、そのせいか主人
公の割には主要人物の中でも存在感が薄い方だった
かも知れません。特殊異能を秘めている、でも派手
な演出ではなく淡々と使いこなして、気付けばいつ
の間に全て片付いている、みたいな手応えでした。
 特殊骨董である『杠屋』メンバーの個々の能力、
晴と同じく使主である真緒の実力など、まだまだ見
たい部分は色々あったので続きに期待したいです。

いのしかちょうをこっそり視ている卯月ちゃん

[著者:鳳乃一真/イラスト:宮原るり・るご/LINE文庫]★★★

 LINE風のアプリ会話に横書き文章表記。主人
公の卯月が他人のスマホのLINE会話履歴を覗き
見て一人ほくそ笑み楽しむ、みたいな流れで。最初
の内は表記の奇抜さやネタありきの内容かと思って
いて、卯月の覗き見が延々続くのかなと思っていま
したが。卯月の抱える事情が明かされて行くに連れ
て、面白さも徐々に増して行くような印象でした。
 卯月の事が分かるまでは、誰とも分からないグル
ープの滑稽なLINE会話を見せられて、それを彼
女自身が妄想の産物交じりで面白可笑しく解釈する
のを見せられて、一体どう反応すりゃいいんだろう
……って気分でしたけど。この積み重ねがあってこ
そ、後の繋がりが際立ってくれたのだと思います。

世界で、いちばん嫌いな君

[著者:みなづき未来/イラスト:窪木聖/LINE文庫]★★★

世界で、いちばん嫌いな君 (LINE文庫)

世界で、いちばん嫌いな君 (LINE文庫)

 告白に舞い上がって本音を言えない女の子。ギク
シャクしてるのは見ていて気持ち良いもんじゃない
けど、心の内に溜め込むよりはぶつけ合ってた方が
清々しいのになあ、と。栞の恋愛の様子を眺めてい
ての前半の頃の気持ち。礼の方がやたらと栞の言葉
を遮って来るので何かあるとは感じていましたが、
それぞれに抱えている傷跡や心の闇などに触れて行
く内に、安易に「ああした方が」「こうした方が」
と意見を言えない雰囲気になってしまいましたね。
 裏に潜んでいる事情とか隠されていた接点とか、
何となく察せられるものではありましたが、繋げ方
が非常に素晴らしくて、特にエピローグに向かう終
盤の展開には思わず溜息が漏れてしまいました。

滴水古書堂の名状しがたき事件簿1

[著者:黒崎江治/イラスト:Tamaki/レジェンドノベルス]★★

滴水古書堂の名状しがたき事件簿 1 (レジェンドノベルス)

滴水古書堂の名状しがたき事件簿 1 (レジェンドノベルス)

 古書店だけど古書店が舞台ではなくて出張先の事
件簿的な、古書に纏わる話よりもそれ以外の怪奇現
象的な、日常から地味に足を踏み外して盛大に巻き
込まれてしまったような、そんな印象のエピソード
群。もっと書物が絡んだモノが主になるのかと思っ
てましたが、主人の古戸時久に書に限定した執着心
があまりないと言うのか、興味を惹かれる珍妙な依
頼だったら何でも良いみたいな性癖があるのかも。
 それでとばっちりを食うのは由宇子。巻き込まれ
慣れて助手役が板に付いてしまって。雇われて間も
ないのにご愁傷さま。ただ、冒頭で見せた異常性も
内に孕んでいるので、怪奇現象関連で窮地に陥って
も意外と乗り切れそうな雰囲気もあるんですよね。