夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去

[著者:園生凪/イラスト:黒田ヱリ/講談社ラノベ文庫]★★

夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)

夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去 (講談社ラノベ文庫)

 叶えられなかった夢を叶える為に見る夢。過去に
残した未練や後悔をやり直しの上で断ち切る為に体
験する夢。けれどもその実、直面する現実から大き
く目を背けたいが故の逃避。成功してから最初の内
はまだ何とも無かったのですが、徐々に告げられた
危険性がじわりと表面化して来るような感覚。颯の
日々の生活ぶりを眺めていて、いずれ夢に捕らわれ
てしまう、もしくは自分から夢への永住を望んでし
まうかも知れない、そんな危惧を抱いていました。
 夢への依存性が確実に増して行くに連れて、あま
り先を見たくない気持ちが強まってしまったりも。
結果的には背けていた筈の現実の繋がりがあったか
らこそ、颯はこの結末を迎える事が出来たのかな。

異世界誕生 2006

[著者:伊藤ヒロ/イラスト:やすも/講談社ラノベ文庫]★★★

異世界誕生 2006 (講談社ラノベ文庫)

異世界誕生 2006 (講談社ラノベ文庫)

 自分の死と引き換えに成し得た異世界転移転生に
おいて、現実世界に残された側がメインの物語は多
分他に見た事がない。『一方その頃……』的な途中
描写は見掛けたかも知れませんが、完全にこちら側
寄りなのは初めて。実際に誰かを亡くした側に立っ
てみれば、こんな風に“遺族が描いた妄想”と扱わ
れるのがごく自然な事にように見える。そう意識さ
せられながら、遺族の妄執や狂気と言った負の感情
に絶えず晒され続けるような、そんな印象でした。
 本来なら目に見えなくてもいい部分。大抵は異世
界の主人公に同調して行きたいと思うものだから。
そこを逆手にとって深く抉り込むように描き切る辺
り、「凄い!」以外の言葉が浮かびませんでした。

世界は愛を救わない

[著者:海老名龍人/イラスト:ももいろね/講談社ラノベ文庫]★★★

世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)

世界は愛を救わない (講談社ラノベ文庫)

 最初に『世界征服』って強烈な印象を与える言葉
を残して、行き着く先は果たして何処か? 巧い具
合に興味を引き寄せられたなあって感じでした。
 自分が世界征服を果たせれば全てが思い通りにな
ると信じての行為、しかしながら、例えばもしも吾
郎、美香、貫地が本当に世界征服を成し遂げたとし
て、その感情まで意のままに出来るものなのかどう
か。「自分が」ではなく「相手が」自分の望んだ形
で応えてくれるだろうか? 抱えているものがとて
も歪であるが故に、目指しても叶いそうにない虚し
さとか遣る瀬無い気持ちを抱いてしまいました。
 うっかり破滅したら感情がぐちゃぐちゃになりそ
うだったので、そう言う意味では救われたのかも。

白魔法クラスの大忍術師

[著者:藤木わしろ/イラスト:紅緒/MF文庫J]★★

白魔法クラスの大忍術師 (MF文庫J)

白魔法クラスの大忍術師 (MF文庫J)

 ユウマの印象。一言で『いやらしい奴』。ニンジ
ャは六国から暗躍を恐れられているよりも、陰湿極
まりない策謀の数々で忌み嫌われていたんじゃない
かなあ、とユウマの行動を眺めていて思ったりもし
ました。いやらしさとは、例えば「何故助けてくれ
ない」に「俺には関係ない」と返している事ではな
く、「何故助けてくれない」の発言自体を巧妙に誘
導して引き出した上で、更に誘導すべく返答を出し
ている事。観察眼に優れていると言えば聞こえは良
いけれど、あまりに真実を見抜き過ぎるので「うわ
ぁ……」となる所は少々あったかも知れません。
 かと言って別にユウマに嫌悪感抱いてるわけでも
ないですが。まだ得体の知れない部分はありそう。

わたしの知らない、先輩の100コのこと1

[著者:兎谷あおい/イラスト:ふーみ/MF文庫J]★★

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

わたしの知らない、先輩の100コのこと1 (MF文庫J)

 「なにこの子、怖い!」ってなりましたよ。同じ
電車に乗りながら虎視眈々と付け入る隙を窺ってい
て、接触を決めたら後はこちらのプライベート一切
無視した強引過ぎる攻め込み。最初期の慶太が真春
をストーカー呼ばわりで避けたがる気持ち、よく分
かりました。実際めちゃくちゃドン引きで、正直真
春のやり口にかなりの嫌悪感を抱く程だったので。
 ところがそれが最後まで読み切ってしまうと、ま
あ不思議とそうでもなくなっていたんですね。慣れ
って怖いですね。実際の所は慶太も気になっていた
ようだし、真春の接触は強引ながらも嫌ではないか
ら続いているのでしょう。池内君の指摘はちょっと
気になる所ですが、その辺りどうなるでしょうね。