[著者:辻村深月/講談社 講談社ノベルス]★★★
“ぼくにとって「SF」とは、サイエンス・フィクションではなく、「少し・不思議な物語」”……とは、藤子・F・不二雄先生が遺された言葉だそうな。私ですら頭の片隅でそんな風な言葉を覚えてたくらいなので、もしかしたら有名? 名言だなと思った。この言葉を抱えておけば、きっと私も苦手なハードSFとお友達になれる……筈。
ドラえもん、ひみつどうぐ、そして生みの親である藤子・F・不二雄先生への尊敬と愛情に満ち溢れた物語。自分以外の個性を見下し、そんな自分の個性を忌避して沈み続ける理帆子。暗い心の海の底でもがく彼女に光を照らし浮き上がらせるまでを描く物語。
とにかくもう若尾の存在が粘着質に嫌らしい。読んでいて「こりゃ堪らんなぁ」と、何度も胸がざわざわしてしまった。どうなるかと思ったけど……取り返しがつかなくなる前に浮上出来て(理帆子が色々な事に気付けて)良かったなぁと。心底ホッとさせられた。
最後にSF(少し・不思議)的な現象を描いて締めてみせる辺り、何とも言えない心憎い演出だなと。私は一体どんなSF(スコシ・ナントカ)なんだろうねぇ? と、自分や他者の個性を考える時にやってみると結構ハマるかも。う〜ん……少し・不干渉、かな。