SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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鉄球姫エミリー

[著者:八薙玉造/イラスト:瀬之本久史/スーパーダッシュ文庫]★★★

 第6回スーパーダッシュ小説新人賞『大賞』受賞作。

 この物語そのものが過激で苛烈な大鉄球。優しさに触れればそれを砕かれ、希望を抱けばそれを壊され、幸せを願えばそれを潰される……徹底的に容赦がない。ただ、心情的に手加減したくなる所を、本気で挑み踏み込んで描いている辺りは凄く好きだなぁ。

 前半のエミリーの超絶セクハラなお戯れ。それに敵方であるマイルズ達の親睦を深めるじゃれ合いみたいなやり取り。正直やや冗長でくどいかな? と胸焼け起こしかけてたのだけど、奈落の底に叩き落された後でめちゃくちゃ効いて来るもんだから参った(激痛を伴ってだから余計にね)。

 間延びしたユルさは“幸せの象徴”であり“平穏の証”。と、破壊された時に初めて気付かされる。エミリー達味方側の心情からだけでなく、敵方のマイルズやコンスタンス達の心情からもそれが痛いほどに汲み取れるから堪らなく切ない。

 次は修道女編らしい。ここにもまた王位継承問題やら亡霊騎士やらが絡んでくるんだろうか? まあどの道内乱状態に陥っている原因をどうにかしない限り、エミリーへの刺客が途絶える事はないんだろうな……。せめて今回よりは彼女が幸せを得られますように。