SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ

[著者:木ノ歌詠/イラスト:尾崎弘宜/富士見ミステリー文庫]★★

 海幸という娘は、自殺願望の有無や自殺意志の強弱にかかわらず、自殺する事が出来ない体質(ってのも何か変な言い方かもだけど)なのではなかろうかと。

 海幸が自殺による死を望んでいても、“死”が海幸を拒んでいるような、そんな感じ。いくら母親を出しに自殺理由を構築しようとしても、保険金と列車飛び込み轢死の自殺計画を立てようとしても、リガヤを利用して自殺願望を遂げようとしても、“死”の側から「お前は来るな」と蹴られてしまう。何せ“徹底的な死”の舞台を芸術的センスで完成させたリガヤの執着心さえ通じないんだからねぇ。図太く生き続けると思うよこの娘は。

 ストーリーは先読みし易い箇所が多かったけれど、だから詰まらないとかでなく、むしろ予想通りに事が運んでくれると妙に嬉しさが込み上げてきたりとか。安心させられたりホッとさせられたりってのもあったかなぁ。

 あとはタイトルにもあるこんぺい糖の使い方が凄く良かった。特に口移しで口づけて互いの熱で溶かしあうってやつ。使い所も絶妙で思わず魅入ってしまった。