SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

沙の園に唄って

[著者:手島史詞/イラスト:井戸端海二/富士見ファンタジア文庫]

 第19回ファンタジア長編小説大賞『佳作』受賞作。

 神子とは? 災いの箱とは? <詞>とは? 神魔とは? 晶術とは? 織音術とは? 龍人とは? こちらから問い掛けたい要素の数々。個々の部分で少しずつ足りなくて、それらが合わさった全体を眺めると結構足りない、という感触。充分に返答が得られなかったってのかなぁ。それぞれの噛み合せも読んでいてどうもしっくり来なくて、そこで何を見せたいのかは把握出来ても、詳細までしっかり掴ませてもらえない。そんな印象。

 訳ありな女の子が主人公で一人称視点、彼女を気に掛ける男が二人。その辺りに触れると、雰囲気は何となく少女小説っぽく。ただ、尺が足らないせいか三角関係なラブロマンスにもなれず(この要素が前面に出ていれば、かなり好みな内容になってたと思うんだがなぁ……)。

 なんか、一冊でこじんまりと纏めるのが勿体無い物語だったね。リッカの欠落した記憶の事、神子としての役割の事、カノンとの触れ合いやクラウスとの切ない対峙の事、もう少しじっくり聞かせて欲しかったな。