SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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帝冠の恋

[著者:須賀しのぶ/イラスト:綾坂璃緒/コバルト文庫]★★★

 表は絢爛豪華、裏はどろどろり、時にキュンキュンで上擦ったりズーンと墜落したり、で最後にホロリと涙に濡れる禁断の恋愛模様。物語の展開も、主人公ゾフィーを取り巻く難解複雑な恋の様相も、素晴らしく起伏が激しい。そして書き手の須賀さんはこの物語を物凄く活き活きと描かれているなぁ、という感じがした。

 相手が遠ざかれば安堵感を抱き、近付けば焦燥感に駆られる。本来結ばれてはならない同士の恋愛だから。なんだけど、勿論そんなの表層だけの表情で、ゾフィーもフランツも強かに表向きの顔を作るのが巧過ぎるから、不意打ちのように奥に押し込めた本心が顔を出した時がどうしようもなく切なくてねぇ……。

 終盤の展開の速さはフランツの残り火を表しているようで、なのにゾフィーの心はかつてない程緩やかに穏やかに満たされて、その雰囲気の対比が特に印象的で堪らなく良かった。