ただ、それだけでよかったんです

[著者:松村涼哉/イラスト:竹岡美穂電撃文庫]★★

 第22回電撃小説大賞『大賞』受賞作。
 拓がこちらに向けていた一人語り。その本音の部
分を、彼が生きる世界の側へ向けて、洗いざらいぶ
ちまけて吐き出す事が出来ていたら? そんなのは
もしもの話になってしまいますが。何も変わらない、
と言う事にはなり得なかった。きっと、これとは違
う場所へ進む事が出来ていただろうと思います。
 もっとも、その本音を外へ吐き出す行為が拓には
実行不可能だったたからこその、そこから生まれた
物語なんでしょうけどね。物語の中とは言え、学校
社会にえらい難儀な教育制度を導入したものだと。
このせいばかりとは言えませんが、要因になってい
るのは確かで。破壊か維持かの論争が生徒内で起こ
ってくれれば良かったのに、と思ったものでした。