SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

白鳥とコウモリ(下)

[著者:東野圭吾/幻冬舎]

 加害者の息子と被害者の娘が手を取り合って、互いに自分の父親に抱いた違和感の解明に立ち向かい突き詰めて行く。タイトルの『白鳥とコウモリ』はここを指し示しており、常識的には到底繋がり得ない関係性が成り立っている辺りにぐいぐい興味を引かれてしまいました。

 主な注目点は、被告人が殺人を犯しているのかいないのか。そして、真犯人でないのなら何故深掘りしたらバレそうな嘘をついてまで罪を背負おうとしているのか。

 過去と現在の事件背景や人間関係を見ると、実に複雑で面倒臭く絡み合っている。それを読み手に非常に把握し易い内容で真相に至るまで見せてくれた所は、本当に溜息が出る程に見事でした。

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第四部 貴族院の自称図書委員II

[著者:香月美夜/イラスト:椎名優/TOブックス]

 ローゼマインの『自称図書委員』と言う立場が表面化し始める展開。これは彼女が将来的に司書の地位を得る予兆、って事なんでしょうかねえ。

 領主候補生の立場的に司書になるのは不可と言われていますが、本に関してローゼマインの中に妥協の文字はないので、ダメと言われて諦める質ではないと思うんですけど。

 ただ、現状でも対応すべき事が山のようにあって、なかなか図書館に掛かり切りと言うわけにもいかないようで。そんな状態に身が置かれる、ローゼマインの思い通りにならない歯がゆさは存分に伝わっていましたね。

白鳥とコウモリ(上)

[著者:東野圭吾/幻冬舎]

 文庫版上巻読了時点まで。真相はまだ分かってません。いや、被告人が全面自供している状況なので、事件自体は解決しているし裁判も罪の重さを問われる為に行われるもの、だと既にほぼ決定付けられてはいるんですけど。

 しかしこの覆りようもない決定的な状況下で、何かが食い違っていて変だなと意識させる違和感を存分に盛り込んでいる辺りが進展の妙で本当に面白い所だなあと。

 被告人と被害者の両遺族が揃って納得出来ていないのが最も気になる点で。もし表向きで解決を見たものが覆るとしたら一体どう展開するのか、正直まだ全然想像出来ていない時点でワクワクしながら下巻に入りたいと思います。

同志少女よ、敵を撃て

[著者:逢坂冬馬/早川書房]

 セラフィマにとって、敵を撃ての『敵』とは誰の事を指しているのか? 故郷の家族同然の住民達を皆殺しにしたドイツ兵達? 母を射殺した狙撃兵? 護る為に戦うと誓った女性達を虐げるものの全て? それとも……?

 終わりの見えない戦火の中で、目まぐるしく変化するセラフィマの立場や状況を追いながら、やがて辿り着いた先で何を『敵』として彼女は引き金を引くのだろうか……と頭の中でぐるぐる巡らせながら読んでるようでした。

 自分で予想していた着地とは違っていて、割と意表を突かれる答えだったのですが、セラフィマが掲げ続けた『信念』と照らし合わせると「なるほどそう言う事か」と納得出来るものでもありましたね。

ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~

[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]

 栞子さんの父・登と母・智恵子の若き日の過去エピソード。高校時代の智恵子さん、謎めいた雰囲気は変わらないながらさすがに今よりも微笑ましい可愛げがあったじゃないか、と。

 もっとも、普段から他人と交流を持たない性質だったのが窺えたので、登と交流を重ねながら彼の事を特別視していたのは間違いなさそうな感じ。

 智恵子が失踪するのを前提条件で結ばれていて、娘達を巻き込んでしまった事は悔いていましたけど、智恵子の失踪に対しては登が恨みつらみや後悔の念を抱かなかったのを知れてホッと出来たかなと。

 普段の智恵子の得体の知れない雰囲気、今回は何となく半減模様な気もしました。過去の話が和らげてくれていたのかも? 篠川家三代の『本の虫』達が共感を覚えているように見えたのが印象的でした。