SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

鍵のかかった部屋 「防犯探偵・榎本」シリーズ

[著者:貴志祐介/KADOKAWA]

 『密室殺人』『密室トリック』がテーマのシリーズ3作目。大体の話が、榎本が密室トリックを暴いて真犯人を暴いた所で即終了。真犯人の動機やら犯行に及んだ心情などはほとんど描かれない事から、あくまで物語の主役は『密室』なのだと言う印象が強く残る内容でした。

 そんな中で、前作に引き続き珍妙な劇団と劇団員が絡んだ話だけは、やたらと『人間臭さ』が感情にあふれて描かれていて、他の話とは随分雰囲気が違いうあって感じなんですよねえ。

 『密室』としては単純明快過ぎる配置なんだけど、この感情的な部分が浮き彫りになるような展開は結構好きだなって思いました。次でもあるのかな? 割としょーもない連中なので、榎本は手応えのなさを感じていそうですけど、面白いので再登場して欲しいですね。

狐火の家 「防犯探偵・榎本」シリーズ

[著者:貴志祐介/KADOKAWA]

 『密室殺人』がテーマのシリーズ2作目。純子ってクールビューティーなイメージがあったけど、こんな天然気質だったとは。

 榎本も天然と認識しているようだし、特に第2話で蜘蛛への恐怖心からの(心の中での)取り乱しぶりが凄くて、これが純子の“素の気質”なんだなと感じさせてくれるものがありました。

 『密室』のエピソードが4編、一口に密室と言ってもまあ色々あるもんだなあとパターンの豊富さに感心してしまいました。

 個人的に後味的な意味で一番印象深かったのは第1話、密室エピソードが特に面白かったのは第3話、変わり種で目を引いたのが第4話、と言った具合。でもまあ純子の素を存分に堪能出来た第2話が一番良かったかな。

フルメタル・パニック! アナザーSS

[著者:大黒尚人/原案・監修:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 シリーズ最後の短編集。ずっと達哉とAS搭乗での非日常な戦場ドンパチやってたので、こうした日常の小話的なやつは妙にホッとすると言うか気楽に読めていいですね。

 主に雑誌掲載の収録分ですが、メインは書き下ろしの本編後日談でしょうかね。本編エピローグはややあっさり気味に感じていたので、そこを補完する意味では充分に満足な内容だったと思います。

 達哉とアデリーナとの新たな関係性とか、二人が離れた“現場”に携わる人たちからの手紙とか、じんわりと心に染み入る内容でした。

フルメタル・パニック! アナザー12

[著者:大黒尚人/原案・監修:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 最終決戦の地が、達哉にとっての『始まりの場所』に定まったのは、やはり意識しての展開だったのでしょうかね。最初の頃にその様子を目撃していた下村さんとか、思い返しながらもこの必然性を感じ取っていたようだし。

 さすがに達哉の敗北はあり得ないしあって欲しくないので、超巨大ASの処理をこなして、AIカエサルとのケリをつけて、オルカンを救えるのかどうか、諸々の様子を見守るような気持ちで読み進めていました。

 AIカエサルの達哉への『執着心』については、ここへ来てようやくなるほどねと納得出来る描写と言うか、本心からの叫びのような『AIの感情』が聞けて良かったなと思いました。

 最後の最後でまさかの殴り合いの格闘戦、からのPSダイダラで“最後の役目”を締める辺りも、初期の達哉を思い起こさせる感じの心憎い演出でしたよね。

フルメタル・パニック! アナザー11

[著者:大黒尚人/原案・監修:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 ラスボスはオルカン? で、いいのかな? と、半信半疑な気分だったのは、何となくその裏にもっと大きな国家規模的な陰謀の臭いがあるようなないような……何ともハッキリ言えない表現なのがもどかしい所ですが。

 オルカンを捕縛して終わり、ではないでしょうね。彼の意識が影響するASに搭載されたAIなのか何なのか、『彼』と表現されている“何か”が、おそらく達哉の真に『断ち切るべき敵』なのかなあって感じではあったのかなと。

 次が最終巻なので物語は最終局面に入っていて、やはり得体の知れない人知を超越した『彼』とやらの存在が最後の鍵となるのでしょう。もう既に割と絶望的な雰囲気があって、達哉がどのように立ち向かってくれるのか、最後の山場で大きな盛り上がりに期待したいです。