SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ビブリア古書堂の事件手帖II  ~扉子と空白の時~

[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]

 智恵子おばあちゃん、年月を重ねて大分いい年になった今でも得体の知れない雰囲気をまとってるのは相変わらずのようで。その空気を察してもなお、正面から臆せず向き合えていた高校生の扉子の度量、もしかしたら智恵子に関する事へ向き合う積極性は栞子さんにはないものかも知れない。

 智恵子の存在が出来きた時点で、「どうせ事件の裏で何らに関わってるんだろうなあ」って事は疑う余地もなく、結局彼女にしか知り得ない真相の一端を煙に巻くようはぐらかしてくれる嫌らしさも表れていました。扉子が智恵子に抱いているのは畏怖とか興味とか、なのかな。

 本と人の繋がりを介して事件の謎を解く事に興味を覚え始めている風にも見えて、その辺りはやはり危険に巻き込まれるかも知れない感じもあるんですよねえ。

ビブリア古書堂の事件手帖  ~扉子と不思議な客人たち~

[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]

 栞子さんと大輔の娘の扉子が新シリーズの主人公かと思ってたのだけど、今の6歳時点ではマスコット的存在のような印象だったかな?

 幼いながら無類の本好きなのは、栞子さんと智恵子とその上の代の血を見事に受け継いでいる。もっとも、本を通じて人の心の内を見抜く事に関してはまだまだ発展途上のようで。まあ6歳でそんな卓越したものを身に付けていたら恐いか。

 それでも時折無意識にか、本に関して鋭い指摘を垣間見せたりしているんですよねえ。さすがに6歳では本に関して底知れない脅威は感じられないものの、案外将来的には母や祖母に匹敵するかそれ以上の見抜きが扉子に備わったりするのかも? 同時に危うさも抱える事になりそうですが、まだ現時点ではどうなるか分からない。

本心

[著者:平野啓一郎/文藝春秋]

 もし死者をAIとしてよみがえらせる事が可能な現実だったら、自分が亡くした近しい人達に対してそれを望むだろうか? と、読みながらずーっと考えさせられ続けていました。

 作中では2040年、現実に置き換えるとあと16年後。現代のAIの爆速的な進化を見るに、実現可能な匂いが強く漂っていて、その雰囲気が死者蘇生について考える事をより後押ししていました。

 ただ、朔也のように死んだ人の本心を知りたいと切望しても、あくまでAIである限り、本当の所は叶わないのではないか。それでも死者と再び対話をしたいのは、それを望んだ自分自身の気持ちを整理する為にこそ必要なものだったように思いました。

ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~

[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]

 母・智恵子の栞子さんへの最終試験、みたいな感じ? だったかなあ。底が知れないので本心を読む事なんで到底出来ないわけですが、栞子さんの本の目利き力を成長させたい、みたいな思惑はあったような気もする。

 そうだとは絶対に悟らせない人だけど、母親としてなのか同類としてなのか、結果的に栞子さんの背中を押していたような形にはなっていたように思う(ひどく屈折した形ではあるけれど)。

 あと、智恵子は大輔の能力の見極めも目的にしていたようにも見えた。栞子さんに相応しいかどうか、みたいな点で試していたのかどうか。何にせよ見込みや関心がないならここまで大輔に接触する事もなかったわけで、そう言った意味では栞子さんを支える底力に期待していた所はあったのかなと。

ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~

[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]

 大輔が栞子さんと付き合って結婚して将来を共にすると言う事は、本にまつわる謎解きの依頼にずっと付き合って行かなければならない、と言う事なのか? いや、大輔なら栞子さんの共同作業でむしろ望む所なのかも知れませんけどね。

 栞子さんが受け継ぐ『本にまつわる謎解き』としての血、そして『どんな手段を用いてでも欲しい本を手にしよう』と求める血と、それぞれの根源みたいものが今回の話の中で大分把握出来たのかなって感じでした。

 それを積極的に表に出すべきか、みたいな所で多分栞子さんは悩んだり迷ったりしてるのかなあと思ったりも。今回の大輔の身に起こった事のように、大惨事すれすれな事態を招いてしまうと、さすがの栞子さんも依頼を受けるにためらいが生じてしまったりするのかどうか。

 なんにせよ、二人の交際が平穏な状態で進む為には、やはり智恵子の暗躍の意図を掴んで、どんな形であっても一度きっぱりとケリをつけなければならないのか。