SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ぼくたちのリメイク Ver.β 3

[著者:木緒なち/イラスト:えれっと/MF文庫J]★

 恭也と貫之、シノアキ、奈々子が、本編とは違う形の『仕事上』で近しい関係になるに連れて、本編との『繋がり』を強く感じられるような展開でした。

 恭也が「もしもプラチナ世代の3人と芸大で創作活動出来ていたら……」と呟いているのを見て、「本編でその願い叶って充実してる最中だから!」と声を大にして伝えたかったですよね。世界線が違うので届かない声なんですけど。このVer.βならではの、恭也達の創作への熱意や連帯感を目の当たりにして、思わず胸が熱くなってしまいました。

 Ver.βは今回で完結との事。今回で本編との関連性がぐっと増してくれたので、更にあちらを追う楽しみが増してくれたかなと思いました。

 ただ一点だけ、茉平の過去に関しては非常に気になる所なんですよね。本編では、恭也とは違う関わり方で登場していますが、異なる世界線なので果たして持ち越して語られるのかどうか。茉平の今後の動向や、恭也との関係にも注目して行きたいですね。

既刊感想:、Ver.β

VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた

[著者:七斗七/イラスト:塩かずのこ/富士見ファンタジア文庫]

 実際のVTuberの生配信もこんな感じなのかな? 見た事ないので手応えがちょっと分からなかったんですが、わちゃわちゃやってて配信者側も参加者側も「楽しそうだなあ」って印象が強かったです。

 とにかく「楽しい!」って感情が、本当に前面に目一杯押し出されていて良いですね。VTuberやライバー(中の人?)と、参加者との『やり過ぎ』なおふざけ全開のコミュニケーションがとても面白い。

 それにしても。今の世の中、『VTuber』って単語だけで意味が通じるんだなあ、と。他にも関連用語が幾つも出て来ましたが、用語解説や注釈はあまりありませんでしたよね。もちろんVTuberに興味のある人が主に手に取って読んでいるとは思うんですが、多分知らなくても何となくの雰囲気で察せられる。そう言う描き方の巧さが光っていました。

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。5

[著者:しめさば/イラスト:ぶーた/角川スニーカー文庫]★

 とにかく、「吉田と沙優が納得の行く形で、望んだ通りの結末に至って欲しい」と願うばかりでした。たとえ二人が(特に沙優にとって)どんな過酷な経緯を辿ったとしても、受け入れる覚悟で読み進めてました。「最後に幸せであってくれるなら」と。

 何せ沙優や彼女の兄・一颯の話を聞く限り、どう考えても母親にまともに話が通じるとは思えなくて。更に家族以外の吉田が介入する事で、どんな事態が起こってしまうのか。少なくとも穏やかに済みそうにない事は分かり切っていたので、踏み込むのに躊躇いましたよね。緊張感が半端なかったです。

 母親との再会シーンで特に強く感じたのは、『吉田と沙優と一颯の3人が揃っていなければ、乗り越えられなかった』と言う事。それぞれが母親に対して異なる接し方が出来た事で、前に進めたんじゃないかなと。特に一颯の行動や感情の描き方はとても良いなと思えました。本当に良いお兄さんだよね。

 最後に。結末に関しては、個人的には非常に満足でした。それは、最初に書いた『沙優と吉田にとって納得の行く望んだ結末』だったから。この結末の先の二人を想像しつつ、余韻に浸ろうと思います。

既刊感想:Each Stories

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。 Each Stories

[著者:しめさば/イラスト:ぶーた/角川スニーカー文庫]

 過去の購入特典などに付属、掲載されたエピソードに、書きおろしを数点加えた短編集。初出は巻末に掲載されていましたが、本編のどの辺りに入るのかってのはハッキリとは分かりませんでした。もっとも、前後の流れはあまり短編エピソード影響は無いと感じたので、あまり気にせず吉田と沙優たちとのエピソードを楽しめていたかなと思います。

 ただ、3巻から読む期間が開いたせいか、一部ど忘れしていた事もありましたが。「神田先輩って誰だっけ?」とか「後藤先輩ってこんな吉田に未練たらたらだったか? て言うか、そもそも吉田の元カノだったっけ?」とか。まあ仕方ないですね……。

 沙優とのエピソードは、過去が明かされた今触れてみて、色々思う所はありましたね。特に家庭環境の件にうっかり触れてしまった時とか。読みながら「すべてに決着が付いた最後は、またこんな平穏な二人であって欲しい」と心底願ってしまいました。

 個人的に好きなエピソードは『小説』と『コスプレ』。どちらも同年代で沙優を精神的に支えてくれる、あさみが絡んだエピソード。なので、どうやら彼女自身の事も気に入っているみたいです。

既刊感想:

ひげを剃る。そして女子高生を拾う。4

[著者:しめさば/イラスト:足立いまる/角川スニーカー文庫]★

 前巻読んでから2年以上間が空きました。「どひゃー」って心の声を発しつつ。吉田と沙優以外の登場人物の記憶は少々曖昧でも、割と分かり易くて記憶にも残り易いお話なので、久々に読みふけりながら「雰囲気は意外と覚えているもんだなあ」と。

 そんな久々の続き。沙優の過去についての告白は初めて、だったかな? どうしても、吉田には話さなければいけない、隠してはいられない、打ち明けなければならない局面。相当に覚悟を決めた、どぎつい過去回想の吐露でしたが、これまで秘めていた全てを打ち明けた事で、より一層吉田への信頼や想いを感じ取る事が出来たかなと思いました。

 あとは、『他人の家庭の事情に踏み込む事は非常に困難』だと思い知らされる。その中で、何より吉田自身が「沙優の為にどうしたいのか?」と、自身の内にも近しい人達にも幾度も問い詰められる。

 吉田の迷いと葛藤、これらの描写も凄く良かったです。色んな人に後押しされての決断。果たしてどうなるか……先を追うのが本当に怖いです。でも、その先に必ず幸せな結末が待っていると信じたい。

既刊感想: