SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ウィザーズ・ブレイン

[著者:三枝零一/イラスト:純珪一/電撃文庫]

 『大切な人の命』を救う為に『大多数の命』を犠牲にするか、『大多数の命』を救う為に『大切な人の命』を手放すか。どちらか一方しか救えない“究極の選択”。最終的には犠牲となる人の選択を尊重する事になるわけですが、それでもどうしても「救いたい!」って強い思いでなりふり構わず突っ走る姿に、思わず熱いものが込み上げて来ました。

 どちらかしか選べない状況で、それでも『両方を救う』と言う“第三の選択”を模索し続けながら、絶望的な中で決して希望を失わずにもがきながら戦い続ける。正直、一時的にでも「人柱を立てないと神戸シティと多数の人口を救うのは無理だろう」って感じで、それでも錬と祐一達は最後の最後まで“第三の選択”を諦めておらず、最後の最後までフィアがどうなるか分かりませんでした。

 個人的には、続刊されるなら『フィアを救う為の物語』に発展するのかも……と思っていました。結末としては、それとはまたちょっと違っていましたけど。先の事を考えるとやるべき事は山積状態で気が重いですが、錬とフィアの物語としてはひとまずは「良かったな」って感じでしたね。


とらドラ!

[著者:竹宮ゆゆこ/イラスト:ヤス/電撃文庫]

 作品タイトルや登場人物は知っていても、小説自体は全く読んだ事なかったシリーズ。とりあえず1巻読了時点での安直な感想→「紆余曲折あって最後に竜児と大河が恋人同士で結ばれるんでしょう?」……さて。

 この時点では、まだどんな方向にも想像あるいは妄想が膨らみますね。まあ竜児と大河が最終的にくっ付いて欲しいてのは、個人的な願望でもあります。だってもう初期のこの段階で相性抜群でお似合いなんだもの。

 ただ、今の所は両者が好意を寄せている北村と実乃梨が、今後も当然深く関わって来ると思うので、果たしてどんな関係性で進んで行くのか。重くなると精神的にきつくなりそうなので、泥沼にはなって欲しくないですけど。今の所は雰囲気的にはそうはなり難いのかなあ。

 ともあれ、竜児と大河とで結ばれた、何とも言えないむず痒そうなこの関係、今後は大いにニヤニヤさせたり悶えさせて欲しいものです。


空ノ鐘の響く惑星で

[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/電撃文庫]

 主人公皇子と、謎の異世界転移少女が出会うお話。初っ端から一口には言い表せないほどに、込み入った事情で展開されていました。でも、今明かせる事はハッキリと、まだ明かせない事はチラ見せしつつ伏せる、このバランス感覚は絶妙だなと感じました。

 と言うわけで、「今度こそ完結まで読みたい!」意気込みでめちゃくちゃ久々な再読。主人公・フェリオの住む世界と、異世界転移者ヒロイン・リセリナが住んでいた世界、この二つの関係性の謎が個人的には最大の注目点と思いました。その事について、錬金術師・シルヴァーナが終盤で意味深な発言をしてましたけど、まあさすがにまだ真相は分かんないですよね。

 今回の急転直下の終盤の展開によって、平穏無害だったはずのフェリオが“皇子として”渦中に身を置く事にもなりそう。異世界人の事、混乱極まるアルセイフ国の状況、どちらもも見過ごせず、またどちらも対処するには相当難しい立ち回りが求められそうです。


エンジェル・ハウリング1 獅子序章―from the aspect of MIZU

[著者:秋田禎信/イラスト:椎名優/富士見ファンタジア文庫]

 主人公、ミズー・ビアンカ。職業・暗殺者。『精霊召喚』の力を持っている。『黒衣』なる集団に命を狙われている。『ベスポルト・シックルド』なる人物を追っている(事情の詳細などは不明)。過去に双子の姉が存在していた。過去に何らかの施設か組織の内に、ミズー自身の事情により監禁され捕らえられてていた?

 久々の再読。現状分かっている事を整理してみた所、“何も分かっていない事”が分かりました。まあタイトルにあるように『序章』段階なので。以前も立ち上がりの展開はこんな印象だった気がします。奇数巻と偶数巻で主人公が入れ代わり、それぞれのエピソードが交錯する事によって全体像が明確になって行く仕組みの物語です。

 謎や疑問が多いので、何に触れても「まだ分からない」となってしまうわけですが、気にさせる部分で大いに興味を刺激される展開とも言えます。あと、前に読んだ時よりも、ミズーに付きまとうアイネストの鬱陶しさと胡散臭さを強く感じだ気もします。こいつも当然の事ながら何かあるんだろうなあと。すっとぼけた頼りなさは多分見せかけだけで、本当はミズーよりも色々物事を知ってそうな雰囲気が、なんとも不気味な存在です。


転生したら皇帝でした1 ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~

[著者:魔石の硬さ/イラスト:柴乃櫂人/TOブックス]

 異世界転生『政争』モノ。幼児皇帝がチートで俺TUEEEで無双して「ヒャッハー」、とかの類じゃなかったです。想像以上に密度の濃い国内外での『政治的駆け引き』が展開されていました。

 とにかく主な舞台の帝国を中心に入って来る情報量が相当なもので、全ての状況を把握するのは結構骨が折れると思います。正直な所、全部が明確に整理されて頭の中には入ってないです。それだけ世界観や設定面の描き込みが半端じゃなかった、とも言えます。

 シリアスで重厚で奥深く複雑に、国家間や個人間での様々な政治的駆け引きが繰り広げられている。特徴的なのが、幼帝カーマインは“操り人形を演じながら”皇帝の地位を最大限に活用出来る道を的確に歩んでいる、という点。

 表向きは『愚帝』を演じつつ、水面下で息を潜めて“その時”が来るのを待っている。それもただ待っているのではなく、裏に隠す皇帝としての才気をいかんなく発揮して、有能な人物を引きつけ動かしながら、じわりじわりと政局を変えて行こうとしている。

 前述のように、情報量が多くて頭に詰め込むのが大変なんですが、その分物語として非常に読み応えがあって面白いです。まだまだ序盤戦、幼児皇帝が成長するに連れて、どんな行動を見せてくれるのか、今後が楽しみです。