SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

天使は炭酸しか飲まない

[著者:丸深まろやか/イラスト:Nagu/電撃文庫]

 好きな人への告白は、しないままで心に後悔を残すくらいなら、たとえ望み薄くて叶わずに砕け散ったとしても、ハッキリと告げる事で思いを全部さらけ出そう。何故なら、自分や想い人が“当たり前のように明日も生きている”と言う絶対の保証はないから。

 「何を大袈裟な……」と、ちょっと小馬鹿にしたような声も、伊緒の過去と引きずり続ける途轍もない後悔を目の前にすれば、きっと途端に引っ込んでしまう。伊緒の『他人の告白の後押し行為』の原点はここにあって、全てを知った時に「なるほどねえ……」と深い溜息が漏れました。

 果たして湊との関りは、伊緒の中で止まった時間を進める切っ掛けになれたのでしょうか? 湊の方は、伊緒と接し続けていた事で良い方向に変わりつつある。湊の『惚れ癖』を払拭するであろう『大恋愛』、相手は伊緒になるとかどうか……この先の行方がどうなるのか楽しみです。

純白令嬢の諜報員 改編I.侯爵家変革期

[著者:桜生懐/イラスト:ファルまろ/富士見ファンタジア文庫]

 ラプターのロザリンド様への過剰な愛の深さと重さを目の当たりにして、正直ちょっとキモいってドン引きしちゃいました。シリアス調で重い展開の物語の中で、ホント暴言みたいで申し訳ないんですけど。

 でも、やっぱりラプターの態度ってちょっと……いやかなり浮いてるよね……? 元々ラプターの物語の中のロザリンドへの感情移入度が常軌を逸してる程に凄かったわけなので、まあドン引きもしょうがないじゃないかと割り切る事にしました。

 と言うわけで、物語の結末に納得が行かなくて悔いが残りまくりの主人公が、死して物語の中へ転生して、自分の望むように改変しようとして行くお話。戦闘能力的にも知識量的にもほぼ無敵状態なので、ストレスなく改変劇を楽しむ事が出来ました。

 今後に懸念があるとすれば、元の公式設定が薄い脇役、今回で言えばルイスのような存在が、ラプターの計画を狂わせて来るかも知れないと言う点。ただ、そう言う想定外の事態があった方が盛り上がりも増して面白くなるのかなと。

VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった

[著者:小路燦/イラスト:伍長/角川スニーカー文庫]

 まあ確かにギャンブル依存症の気があるクズでしたが。でも、多額の借金を背負っている事に自覚があって、事実に目を背けず正面から向き合って、小額からでも返済しようと意識的に努力している。

 VTuberになった動機が不純ではあるにせよ、ただのVTuberファンの素人同然から演者側に回って、試行錯誤で頑張っている姿って意外に好感持てる存在だなあ、と加々宮エリン=新垣亜理紗を見ていて感じさせられました。

 上昇傾向でも調子に乗らず驕らず、『どう演じれば視聴者を楽しませる事が出来るか?』を常に考えている。マイク役の主人公・春人も言っているように、もの凄くVTuber適性があるんじゃないかなあと。

 実際VTuberには詳しくないので、現実の生配信の熱気がイマイチ理解出来ていない気もするのですが、逆に触れた事ない人に興味を持たせるには抜群の内容だと思いました。

迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について

[著者:ネコクロ/イラスト:緑川葉/ダッシュエックス文庫]

 クラスメイトになった超絶美少女留学生が、偶然隣の部屋に引っ越して来て、交流を重ねる内にいちゃいちゃ半同棲生活に……と言う雰囲気にはなりませんでした。読む前のイメージからは、割とお約束展開になりそうな印象を抱いていたのですが、実際には結構違っていましたね。

 まず主人公の明人が、相当に面倒で複雑そうな“訳あり事情”を抱えているようで、その影響からか時折物語の雰囲気が重くなったりします。この辺りの様子が特徴的であり印象的でもあり、ただほとんど明かされないまま持ち越されたので、ちょっともやもやっとしたものが残るのが気になる所でもありました。

 あと明人と同じように、シャーロットとエマちゃんの方にも何か複雑な事情が見え隠れしているように感じられましたが、こっちの方もほとんど手掛かり的な描写もなくて気になっているんですよね。

 特に明人が抱えている方は根が深そうな問題っぽくて、そこにシャーロットがどこまで打ち解けて交流を深めて踏み込めるようになるのか? この辺りが今後の注目点になって行くのかも知れません。

空ノ鐘の響く惑星で6

[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/電撃文庫]★

 色々な新事実が明らかになり、同時に人同士や物事の繋がりが様々な場面で複雑に絡み始めて来たような印象でした。非常に速度的に、フェリオだけでなくこの世界全体の状況が目まぐるしく変化を見せ続けている。

 どうやらフェリオとカシナート、アルセイフとタートム、神殿の所有を巡る対立、などの限られた範囲では事が済まなくなりつつある。『来訪者』達の世界とこちら側の世界の関係も僅かながら見え始め、更にその秘匿された力を利用する西の大国ラトロアの介入で、これまでの状況が激変しようとしています。

 フェリオにとって誰が味方で誰が敵か、誰がどんな情報や事実を握っているのか、誰と誰が本当はどのような関係で繋がっているのか……あらゆる事を慎重に見極めて行かなければならない局面に立たされつつある。とにかくどこを追っても非常に面白くて、先の展開が気になって仕方がない。

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