SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

魔力ゼロの最強魔術師2 ~やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?~

[著者:北川ニキタ/イラスト:兎塚エイジ/TOブックス]

 異端者扱いで○○されるわ、偽神絡みで戦って○○するわ、描写的にはなかなかにエグい展開でした。本当に今回アベルに起こった事で、でもまあ敵の眼をあざむく“ダミー”を用意出来ていたので、割と普段通りに平然と余裕な態度でしたが。

 それにしても、アベルでなければ回避出来ずに本気で○○されていた事実を目の当たりにして、背筋が凍りつくような恐ろしさを感じてしまいました。普段のアベルが大事でも全く動じなくて余裕ぶっこいてる風に見えるんで、危機的状況に対する感覚が変になってるのかも知れません。

 強固な『絶対的魔術信望』、問答無用で破壊の限りを尽くす『偽神』、どちらの要素も想像以上にヤバい。アベル一人でどうにかなるかと言えば……何とかしてしまいそうな妙な期待感はあります。妹を偽神から救う為の切り札・『賢者の石』生成に向けては、今回の騒動を経て一歩前進と言った具合です。

既刊感想:

硝子のハンマー

[著者:貴志祐介/KADOKAWA]

 女性弁護士・青砥と防犯コンサルタント・榎本のコンビが、密室殺人の不可能犯罪の謎に挑む。特徴としては、防犯にやたらと詳し過ぎる『防犯探偵』が絡んだ、防犯アイテムが事件性に多く絡んでいる印象のミステリーです。

 その防犯アイテムに対して、事件とは関係があるものと無関係のものとを見極める捜査が非常に難航する展開。と同時に『防犯のプロ』である榎本の調査で徐々に全貌が明らかになって行く、と言う過程はとても見応えのあるもので面白かったです。

 とにかく検証と実践と失敗の繰り返しで、実に泥臭く試行錯誤を繰り返しながら手掛かりや気付きを得て行く。鮮やかに謎を解いて犯人を暴く爽快感とは別種のものですが、地道な作業の繰り返しで真相に近付いて行く辺りはとても見応えがありました。

 榎本はただの善良な防犯探偵などではなく、青砥は失敗しがちだけど直観的な鋭い気付きを見せる、この二人の奇妙な関係の描き方も良いなあと思いました。

魔力ゼロの最強魔術師 ~やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?~

[著者:北川ニキタ/イラスト:兎塚エイジ/TOブックス]

 魔力ゼロの主人公・アベルが、どうしても魔術を使いたい為に徹底的に魔術理論を学習して、でもそこに限界を感じた所で『科学理論』なる古代書を手にして、絶対と言われる魔術理論を論破しつつ独自の『魔術』を開発して極めて行くお話。

 魔術を受け入れながら疑問の余地をはさみ、新たに得た科学の知識で疑問を晴らして『魔術と科学の融合』を果たす、と言った感じでした。まだまだ発展途上で、アベルにとっても精進の日々。

 一般的な魔術信望者にとっては、アベルの行為は『異端者』に当たるので、その辺りの周囲の目をどう誤魔化しかわして成果を上げて行くかが見物です。

 アベルは『偽神』なる存在から妹が受けた呪いを解く為に、新たな魔術と科学の融合理論の境地を目指しています。興味深いのは、無双はしていてもチートではない点。全てはアベルの学習の成果と言う所が、彼の底知れぬ凄さを物語っているように感じました。

僕は今すぐ前世の記憶を捨てたい。~憧れの田舎は人外魔境でした~

[著者:星畑旭/イラスト:スズキイオリ/TOブックス]

 ふと田舎の空気を感じたくなる。その環境で優しいじいちゃんばあちゃんと一緒にメシを食いたくなる。病弱な3歳児の男の子(読み手の立場によって息子だったり年の離れた弟だったり姪っ子だったりあるいは孫だったり)を、もの凄く過保護に甘やかして可愛がりまくりたくなる。そんな物語。

 舞台は現代日本のようでいてちょっと異なる世界。魔法があって魔物がいて、田舎に行く程魔力の素の『魔素』も魔物も増えて行く。主人公の3歳児の空くん、『魔素欠乏症』なる病気で、魔素が少ない都会では暮らし辛い体質の為、母の実家で祖父母の住む田舎へひとり移住する事に。

 その田舎と言うやつが、規格外の人外魔境で面白い。虫は巨大、植物は動く、家には神様が住まう、そして住民たちは大人も子供も環境適応するようにめちゃくちゃ強い。

 前世の記憶の一部が急に生えた空には、日本と同じようで異なる世界が異世界のように見えてしまう。前世の常識が邪魔をしてこの現実を受け入れ難いから、『今すぐ前世の記憶を捨てたい』と言うわけです。

 もっとも、じいちゃんもばあちゃんも住民達も、みんなとても親身で優しいので、空も徐々に異質な環境を楽しめるようになって行きます。そんな様子を眺めつつ、ほっこりした雰囲気に浸らせてもらえました。

さよならの言い方なんて知らない。

[著者:河野裕/イラスト:越島はぐ/新潮文庫nex]

 『架見崎』と呼ばれる荒廃した都市で、1000人規模のサバイバルゲームが繰り広げられる。現実世界のようでいてそうではなく、仮想現実かそれとも異世界か、実態がまるで分からない世界『架見崎』。

 何故かゲームの参加権を得た主人公の香屋と秋穂は、かつて同じアニメ『ウォーター&ビスケット』を愛した親友トーマの姿を追って、謎めいた危険なゲームに身をさらして行く事になる。

 表向きはチーム戦の『陣取り合戦』で、統一を果たしたチームに褒美が送られる、と言うもの。ただ、当然ながらハッキリ見えているものが正解などではなく、裏側で相当複雑にこじれた謎や秘密がうごめいているような印象です。

 それが何かは分からないけど、“何かある”事にいち早く気付いているような香屋だけが全く違った視点で行動している。先読みが凄過ぎて人間離れしている風で、ゲームで得た能力ではなく、最初から備わった特性ってのが特に異彩を放っている所でしょうかね。

 香屋にとってはクリアが目的ではなく、『この世界の真相』を解く事を目的としている。対運営者的な立ち回りで、果たしてどのようにして得た特殊能力を駆使して真相へと迫って行くのか。