SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん4

[著者:燦々SUN/イラスト: ももこ/角川スニーカー文庫]

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 アーリャさんの『ボソッとロシア語デレ』の破壊力がとにかく凄まじかったです。前回のような、政近・アーリャと有希との『生徒会選挙戦』が影響した対立関係的な展開はほとんどなかった為、政近とアーリャのラブコメ成分がかなり際立っていた印象でした。

 政近と有希の関係は、選挙戦の駆け引きが絡んだピリピリ感と、日常生活での兄妹関係の緩んだふざけ合いな感じは別種のモノで。お互いに『それはそれ、これはこれ』と、しっかり切り替えが出来ているのかなあと感じたりもしました。

 他に今回の中で気になったのは、ちょくちょく触れられていた『政近の幼少期の記憶』に関する部分で。政近が触れて来た複雑で面倒な家庭環境などは大体把握出来て、あとハッキリしないのが幼少期に触れ合った『ロシア語の彼女』の素性について。ただ、結構ヒントは出ていたので「ああ、やっぱりそうか」って感じでしたね。

既刊感想:

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん3

[著者:燦々SUN/イラスト: ももこ/角川スニーカー文庫]

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 あまり頻繁には出さず、ここぞと言う所で政近を“狙い撃ち”する。ボソッとロシア語でデレるアーリャの様子はさすがの破壊力。巻が進むに連れて、控え目な無自覚ピンポイント狙いが際立って来ているのは気のせいかどうか。

 もっとも、全体的な話の雰囲気を見ていると、アーリャの言動に身悶えしたり、政近とのいちゃいちゃ激甘ぶりが際立っているのとは、ちょっと違った感じなんですよね。どうも背景に『次期生徒会長選挙戦』が絡んでいる為か、身軽で明るいラブコメ展開にはなかなか振り切れない印象で。

 政近と有希の掛け合いは、兄妹漫才のようなおちゃらけ空気を含みつつも、互いが本気モードになると駆け引き全開でピリピリした雰囲気に一変したりする。ここが非常に面白く見応えのあるポイントではありながら、一方で政近とアーリャのいちゃいちゃをもっともっと見たいぞ、と思ったりもしてしまいます。

既刊感想:

サークルで一番可愛い大学の後輩 2.消極先輩と、積極後輩との花火大会

[著者:水棲虫/イラスト:maruma(まるま)/富士見ファンタジア文庫]

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 「さっさと花火大会に誘えやこのヘタレが!」と、前半の牧村に何度言いたくなった事か。でも、牧村自身にヘタレの自覚も超絶消極的な自覚もあって、「もしも美園にその気がなくて、こっちの思い込みの勘違いで断られたら……」みたいな、思い切って踏み込めない気持ちも分かるんだよなあ……ってもどかしさ満載な気持ちで読んでました。

 牧村の場合、より正確には『自分が美園に振られて傷つくのが嫌だ』ではなくて、『自分の気持ちに応えられなかった場合、美園が気まずい思いをするのは嫌だ』なんですよね。どんな状況になったとしても、牧村は自分がどうなろうと関係なく常に美園の気持ちを考えている。

 だから、表面上だけの様子でタレだ消極的だと断じて言い切れない。多くのサークル仲間にも認められる程いい奴だからね。なので終盤の展開は、思わず飛び上がる程に嬉しかったです。文化祭本番へ向けて二人の仲がますます加速して行きますように。

既刊感想:

サークルで一番可愛い大学の後輩 1.消極先輩と、積極的な新入生

[著者:水棲虫/イラスト:maruma(まるま)/富士見ファンタジア文庫]

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 大学サークル活動内での先輩(主人公)後輩(ヒロイン)ラブコメ。『学園祭実行委員』に『サークル活動』を混ぜたような雰囲気で、秋の学園祭に向けての長期計画的な委員会活動でありながら、メンバー間のプライベートな交流も割と盛んな印象でした。

 読みながらずっと気になっていたのは、『美園は何故牧村に対する好感度が最初から高いのか?』と言う事。理由や事情を持っているのは何となく分かっていながら、ハッキリとは表に出ないので結構焦らされてしまいました。

 前年実行委員を務めた牧村と面識があるように感じながら、牧村の方が全然覚えていないのも謎でしたし。この辺りの答え合わせは、終盤の美園視点の独白にて。美園の好感度が高いのも、牧村が覚えていないのも、ちゃんと答えがありました。

 今の時点では先輩後輩の友達以上、恋人直前、って感じでしょうかね(まだ面と向かって告白はしていないはずなので)。学園祭へ向けて二人の関係がどう盛り上がって行くか、学園祭が終わったあとの展開がどうなるか、主に気になる所です。

祈りのカルテ

[著者:知念実希人/KADOKAWA]

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 研修医の主人公・諏訪野良太。彼の『患者個人とその事情に寄り添い過ぎてしまう』『患者の複雑で微妙な感情の変化に気付き過ぎてしまう』特性は、果たして医師として良い方へ働くのか? それとも重い足枷になってしまうのか?

 様々な医科を研修医として巡りながら“訳あり”な患者と接する諏訪野を見て、時に入れ込み過ぎな危うさはありながら、おおむね患者にとっても諏訪野自身にとっても良い結果に繋がっているなと思いました。

 ただ、各医科の指導医達は口に出さずとも、諏訪野の特異性に対して『期待』と『危うさ』が入り混じったような反応を示しているようにも感じられました。

 おそらく気付き過ぎるが故に、諏訪野は今後も訳あり患者と接して行く事になるのでしょう。正式な専門の医師となった事で、患者との関わりを含めて、様々なプレッシャーに精神が押し潰されない事を願うばかりです。