SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

レプリカだって、恋をする。

[著者:榛名丼/イラスト:raemz/電撃文庫]

 レプリカ(ナオ)の本体(愛川素直)が、途中までレプリカに対してあまりに感じ悪すぎて、ちょっと冷静ではいられなくて困ってしまいました。自分の都合で使っては消して、って扱いに対して「そりゃないだろう」みたいな具合で。

 実際にナオの恋愛に感情移入出来たのは結構後の方で、ようやく事情を知った素直へのムカつきな件が割と解消されてからだったように思います。

 あとは、『レプリカそのもの』についてでしょうかね。意外と描写の掘り込みが浅かったので、素直が生み出した原因も含めて「結局何だったんだろう?」となってしまったりも。

 “そういうものだ”と受け入れてしまえば、淡く切なく初々しくてくすぐったい恋愛模様を堪能出来るお話でした。ただ、レプリカの本質については気になっているのも正直な所で、もし次があればその辺りの深掘りを期待したいかなと。

空ノ鐘の響く惑星で7

[著者:渡瀬草一郎/イラスト:岩崎美奈子/電撃文庫]

 ウルクの運命が次々に翻弄されまくっていて辛い……。最善を施したムスカ教授の言葉と態度が不穏過ぎるんですけど、フェリオとの大切な記憶が戻って欲しいのはもちろんですが、とりあえず精神障害などなく無事であって欲しい。

 物語の方は、どうやら仲違いした『来訪者』達とラトロアを相手に戦う展開に進んで行く模様。イリスの心を解く鍵はエンジュが握っていて、一番ヤバそうなのは底が知れないシズヤ、と言った印象です。ただ、不安と焦燥はあるものの、コウ司教の穏やかな態度が救いと抑止に繋がってくれそうな予感もあります。

 あとは異界と関連した『御柱』の謎について。なかなか見えて来なかった真実に少しずつ近付き触れ始めているので、その辺りも物語にどう絡んで来るのか注目してみたい所です。

既刊感想:

ノワール・レヴナント

[著者:浅倉秋成/KADOKAWA]

 作中の『ノワール・レヴナント』と言うトランプのゲーム、面白そうで詳しく検索したら『作中での創作』だったみたいで、そこに「え、そうなの?」と結構な驚きがありました。

 一作の為によくここまで練られているなあと言う感嘆の声と同時に、ただのカードゲームでは終わらない、物語の“仕掛け”としても効果を上げている所も非常に面白く感じられるものでした。

 と、それはさておき本編のお話。4人の高校生が、自分達の中に目覚めた『超能力』的なものの謎を追いながら、とある一流企業の裏側の事件に巻き込まれて行く。結局、超常現象的な何か、だったんでしょうかねえ?

 現実的には説明出来ない所で、ちょっとした『謎の残り香』みたいなものが感じられる結末だったかなと。皆が綺麗に納得して解消……にはさせずに、ある人物にだけちょっとした“捻り”が加えられた演出もなかなかに良いものでした。

アイドル失格

[著者:安部若菜/KADOKAWA]

 この結末に触れて、「付き合い続けていてもいいんじゃないかなあ」と、ぼんやり考え込んだりしていました。ファンとの個人交流は、あくまで内輪にバレただけで、幸い?SNSなどでの暴露拡散炎上には至らなかったわけだし。

 それでも、これはアイドルとしての『けじめ』の意思を、ガチ恋オタクな推しが『尊重』した結果として、二人がそれぞれに出した『答え』だったのかなと言う気持ちに至りました。

 実々花はアイドルとしての輝きと羨望を容易くは捨てられないかも知れないし、ケイタはガチ恋推しの消失を埋められずにいつまでも引きずってしまうかも知れない。

 それでも、いつか自分の中で折り合いがつけられたとしたら、どこか別の立場と場所で、改めて付き合って欲しいなあ……なんて思ってしまいました。

六人の嘘つきな大学生

[著者:浅倉秋成/KADOKAWA]

 一番最後に「報われた……」の一言が、深い深いため息とともに残りました。

 『一流企業の最終面接』と言う緊張状態の極限の中で、次々と同期メンバー達の『薄汚い闇や嘘』が理不尽に暴かれて行く。

 謎とされていたのは、面接から数年経った状態で参加者達に意見を求めている『聞き手役』は誰か? そしてもちろん、全てを仕組んで面接参加者達を陥れた『真犯人』は誰か?

 中盤までは、この二つの『謎』が物語を強烈に引っ張っている印象でしたが、やがてこの物語の『本質』はそれらとはまた別の所にあるのかも、と気付き始める事になりました。

 それぞれが裏側で抱えていた『薄汚い闇や嘘』の更に“裏側”、つまり当時だれもが目が曇って見えていなかった『表の真相』について。事の本質はそこにあったのかなあ、なんて思いながらの最後の最後で形になった『報われた気持ち』でした。