SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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サイコロジカル(上) 兎吊木垓輔の戯言殺し

[著者:西尾維新/イラスト:竹/講談社 講談社ノベルス]★★

 いーちゃんと玖渚友の距離。これまで目を背けてきたか、或いは無意識の内に『無関心』『無反応』『無感情』で通せてきたものが、兎吊木垓輔との対話でぼろぼろ剥がれ落ちてゆくこの感触。何とも言えず居心地が良くなくて、焦燥感に駆られ何時の間にやら崖っぷちに追い詰められてゆく。そうか……“戯言殺し”ってのはこういう事なのか、と。

 しかしまあ、玖渚友が中心に在って物語が回るのはこれが初めて? おそらくそういう要素があるお陰で、興味を惹かれる部分が実に多かったなぁと。友が過去に天才達を束ねて何をやっていたか、そしてその過去の現実が現在のいーちゃんにどんな影響を与える事になるのか。とりわけ興味深いのはその辺り。

 いーちゃんはこれまでと微妙に違う。兎吊木との対話で露呈された感があって、「何かいつもと違うか?」とハッキリ認識出来るのは、今回友の存在がいーちゃんの中に深く深く介入しているから……だと思う。

 “玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないか?”と突き付けられた質問。結局返答出来なかったいーちゃん。きっと複雑怪奇に渦巻く心中で、そんな単純に答えが割り出せるもんじゃない。下巻が終わった時、彼に何かしらの“答え”が出せているのだろうか?

既刊感想:『戯言シリーズ』感想一覧