SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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カッティング 〜Case of Mio〜

[著者:翅田大介/イラスト:も/HJ文庫]★★★

 第1回ノベルジャパン大賞『佳作』受賞作。

 リストカットを含む自傷行為に走る精神状態。たとえ類似的状態にある人であっても事情は個々で異なるものだから、きっと当事者にしか分からない。ましてや健常者には到底計り知れないもので理解が及ぶわけもなく。

 ただ、イメージとして常に意識が“死”に向かっていると思っていたのだけど、ミオの場合はそれとは真逆の意識――自己存在を確認する=生きている事を実感する行為として描かれていたので、良い意味で意表を突かれたなぁと(ミオについて伏せられていた真実を知った時点で成る程と納得させられた)。

 しかし、真実を知った上でミオをまるごと受け留め受け入れるのはなかなか容易な事じゃないよな〜。たとえ共感を得易いかも知れない特殊な精神疾患を持つカズヤであっても、それは同様の事だったと思う。だって、一度ミオのなかに施されたものってのは、今回の件が落着した所で“取り除きようがないもの”だから。少なくとも現時点ではね。

 ただ、それでもカズキがミオを受け留め受け入れられたのは、本当に単純に“好きだ”って気持ちを強く大きく上乗せする事が出来たからじゃないかな?(そうであれば素敵な事だと思うんだけど……)。ともあれ最後は偽りの無い微笑が見れて凄く嬉しかった。