SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

藤堂家はカミガカリ

[著者:高遠豹介/イラスト:油谷秀和/電撃文庫]★★★

 第14回電撃小説大賞『銀賞』受賞作。

 シリアスムードがいつの間にやらぐだぐだになってしまう困ったちゃん。一度ならず二度までも緊迫の対峙をお間抜けさんであっさり崩し、神一郎も美琴も敵さん達もみんなボケてるもんだからどうしようもないくらいの共倒れ(ナイスミドルな糖尿病吸血鬼はホント何しに出てきたんだよ)。だが、そこがいい! 凄くいい! 

 周慈と春菜との日常生活でも、敵との戦闘時でも、これだけ脱力感が続くと、妙にクセになってしまったりとか。「また神一郎か美琴がぐだぐだになりそうな事やってくんねーかなー」ってな具合。気付けばそんな期待を寄せている自分がいて、対して二人はきっちり応えてくれやがるので、更なるボケを楽しみにしてしまう、と。

 しかもこいつら、ただバカな事やってるだけじゃなくて、誰かを護る為の強さや、誰かを救う為の優しさをストレートに見せてくれるから、その落差が堪らなく魅力的に映るんだよな〜。あまり口には出さないけど、代わりに態度で意思を示す、みたいな感じ。とりわけ神一郎が春菜に“魔法”をかけるシーンが凄く良かった。