SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

MAMA

[著者:紅玉いづき/イラスト:カラス/電撃文庫]★★

 何かの代償を支払い別の何かを得て、何かを得た代わりに今度は違う何かを失い、その失ったものを埋めるようにして新たな何かを得る……そんな得失の繰り返し。

 端から自分は不幸だと決め付けていても、必ず何処かで背負った不幸と同等の救いや幸福が訪れ、もしそんな救いと引き換えにまた別の何かを失ったとしても、別の救いが必ず消失の穴を埋めようとする。人生なんてそんなもの。一生の内、決して不幸が幸福を上回る事はなく、幸せの方が余分に訪れるように出来ている……という事を激しく訴え掛けている、ように感じられた物語。

 大切なのは、そういう事を「心底告げてあげたい!」と思う相手が、自分自身の力で気付けるかどうか(本編で言うならトトって事になるのか)。トトが本当にそれに気付けたのは、多分自分を見ていたのはホーイチだけではない、と理解した時。トトは最初からひとりなんかじゃなかったのだけど、もしかしたら様々な不幸な状況がその事実を見失わせていただけだったのかもね。

 『MAMA』と『AND』、共にラストは、トトは幸福への道標を確かに見付けて辿る事が出来たんだなぁ、と感じさせてくれるもので凄く嬉しかった。