SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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とある飛空士への追憶

[著者:犬村小六/イラスト:森沢晴行/ガガガ文庫]★★★

 骨の髄まで叩き込まれた染み込まされた格差社会に差別社会。もし、シャルルにそういうしがらみや足枷が無ければ。もし、出生が両種族の『混血』ではなく最底辺階級に身を置く事がなければ。もし……だったら……もし……だったら……この後“もし〜だったら”を十数回くらい延々と垂れ流したい。そんな気持ち。

 そりゃあ読み手の私が何回も何十回も「レヴァームも天ツ国も放り投げて、二人きりで世界の果てまでも逃飛行してしまえよ!」と思った程だから、きっと当の本人達=シャルルとファナの二人は、合わせて何百回とそういう想いを募らせていたんじゃないかなぁ。

 任務の途中で惹かれ合う二人の内に秘められし感情は一体如何ほどのものだったのだろう? と、想像を積みに積み重ねた末に迎えたこのラストシーン……もう耐えらんなかったよ。心の中がボロ泣きだった。

 終章は、こちら側に解答を委ねる形で“貴方のご想像にお任せします”な締めだったのだけど、これがまた心憎い演出で素晴らしい。ここはやっぱり、“もし”が実現する夢のような想像に身を委ねてみたい。