[著者:三河ごーすと/イラスト:Hiten/MF文庫J]
もう冒頭の日記から、沙季が悠太の事を“異性”として“恋愛感情”を抱いて、『好きで好きで仕方なくてどうにもならない』想いが抑え切れなくなっている。その感情が物凄く分かる1ページでした。
正直、表面上の沙季からそこまでを感じ取る事が出来なくて。基本悠太の視点で物語を追っているので、おそらく彼にも全く想定外の感情なのだと思います。それだけ、沙季が本心を表に出さない、悟らせない術に長けていると言う事なのでしょうかね。
これが終盤の『沙季の日記』と言う形で、彼女の視点で赤裸々に綴られてしまうわけですよ。しかも、その前の段階で、悠太の方も沙季に対し異性として恋愛感情を抱いている事に気付いてしまう、と言うね。何とも言えないもどかしい気持ちでした。
傍から両者を見らた、紛れもなく『両想い』。なんだけど、そこには『義兄妹』と言う、極めて複雑で分厚くて大きな壁が立ちはだかっている。二人とも、本当にその事を気にして、互いに相手に本心を気付かせない様、細心の注意を払い振舞っている。
無理をしている、とまでは行かなくても、“決してそう思わない様”に感情を抑制している。誤魔化している、とも見て見ぬ振りをしている、とも言える。そこが時折、非常に窮屈に感じられてしまう。
ただ、悠太も沙季も、本心を抑えれば抑える程、逆に相手の事を考えずにはいられなくなりつつある。現状、気持ちを伝えて幸せになれるかと言えば……と思うと、自分でもどんな展開を望んでいるのか、ちょっと分からなくなってしまいますね。