SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編I

[著者:久宝忠/イラスト:ノキト/TOブックス]

 異世界転生した主人公・涼が、ひとりぼっちでひたすらに『水魔法』を極める事に心血を注ぐお話。中盤くらいまでずーっと、人間の登場人物は涼ひとりだけです。こうやって触れている以上に、延々と存在感の孤独が続いていたような印象でした。

 ただ、涼自身はだいぶ楽観的というか、何をするにもとりあえず前向き思考で、読んでいて重く暗い気分になったり挫折感を味わう事はほとんどなかったです。涼を転生させたミカエル(仮名)の事を信頼していたからなのかどうか、転生した最初から「ミカエル(仮名)が対応してくれた事だから大丈夫」みたいに言ってましたよね。

 あとは元来の性格的な影響なのかな? とにかく“与えられた水魔法の才能だけでどうにかする”事を徹底していました。延々と淡々と、試行錯誤と検証の実践の繰り返し。実際に気の遠くなるような数え切れないほどの繰り返し。でも、弱音を吐かないし挫折しないし泣きごと言わないし諦めない。涼ひとりだけの行動を追っていても、全然飽きなくて凄く楽しかったんですよね。

 で、相当の年月を経て、気付けば規格外な『水魔法マスター』の強さを“無自覚”に身に付けたわけです。途中、漂流して来た剣士アベルと出会い、ようやく物語が動き始めての新天地へ。まだ序章の序章との事で「まあそりゃそうだろうなあ」って感じでした。涼自身の物語は『やっと、これから』なのでね。終盤で外伝として語られた『火属性の魔法使い』オスカーとの関連性も、今後の展開の中で気になる所です。