SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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十年目、帰還を諦めた転移者はいまさら主人公になる2

[著者:氷純/イラスト:あんべよしろう/MFブックス]

 『九年間、前の世界への帰還を求め続けていた』事や『必死に帰還方法を探し続けていた』事、それから『十年目で諦めて異世界永住を決意した』事など。物語の展開上、あんまり重要ではなくなっていたのが、ちょっと惜しいと言うかもったいないと言うか。

 まあ「この設定をどう活かして欲しいか?」と問われても、トールは既に前の世界帰還に見切りをつけているので、どうにも活かしどころがなさそう……と思うのが正直な所なのですが。あってもなくてもどちらでも話が成立するならば、トールには「俺は九年間必死で頑張った」「でも無理だから諦めたんだ」とか、頻繁に主張してその事実を忘れさせずに思い出させて欲しいものです。

 あとは読みながら「いまさら帰還方法の手掛かりががひょこっと見つかんねえもんかなあ」と、ついつい思ったりしてしまいます。ユーフィ、メーリィ姉妹に囲まれて楽しそうで生活も安定していて強さも規格外だから向かうところ敵なしだし、そんな順風満帆を崩す波乱を欲しているのかも知れません。

 決して退屈なわけではないんですけどね。『魔機車』なる乗り物を手に入れたり、噂の『吸血鬼』とお近付きになってみたり。この三人の能力値だからこそ出会える経験なのかなと。この先も退屈せず色々と楽しませてもらえそうですね。

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