［著者：増田匠見／イラスト：さかもと侑／アース・スターノベル］★
あくどい事を本心から悪だと自覚して行っている悪徳領主ルドルフ。彼の側の視点だけを追っていると、本物のクズ野郎の所業にしか見えませんでした。
ところが、裏を返してそんなクズと関わる人達の視点で見ると、誰も彼もがルドルフの所業に対し尊敬と賞賛と感謝の視線を送っている。この盛大なボタンのボタンの掛け違えみたいなちぐはぐな噛み合わなさが、もうめちゃくちゃに面白かったです。
ルドルフの視点を描いた後に関わる相手側視点を描く事で、ルドルフの心のクズさとは裏腹な周囲の評判の良さがどんどん拡散されて行く。こう言った物語の構成の妙にも凄く良さが際立っていました。
巡り巡って「この場面でルドルフとこの人が関わっていたのか！」とか「この人とこの人がこんな所で影響し合っていたのか！」とか、実に様々な人物同士の『表と裏』が影響し合っている。そんな見せ方もとても印象的でしたね。続刊は無いので一巻完結なのが実に惜しい。でも、うまく一冊でまとまっているのでこの巻だけで充分に楽しめした。
