[著者:賽助/ディスカヴァー・トゥエンティワン]
『鉄塔マニア』の地味メガネ主人公・伊達、自転車飛行機を飛ばしたい奇行少女・帆月、幽霊が見える不登校の不良少年・比奈山。ある日、帆月が見たと言う『鉄塔の上の少年』の謎を発端に、三人が幾つかの不思議な現象に出会いながら鉄塔の少年の謎に迫って行く物語。
中学生時代の夏休みの田舎でのちょっと不思議な体験の風景。クラスメイトの女の子との交流、未知の冒険のドキドキ感、どこか郷愁を感じさせるじりじりとした夏の暑さと自然の情景、けだるさとワクワク感が同居するような夏休みの生活……どのシーンを切り取っても『青春のど真ん中』って感じで、じんわりと心に染み入るような気分を味わわせてもらえました。
妖怪や幽霊のようなオカルト要素を織り交ぜつつ、具体的にはなかなか他者に理解してもらい難い不可思議現象を体験してゆく。そして、その先に続いて繋がっている物語のテーマに触れる事になります。
帆月についてもっと知りたい所も正直ありましたが、最後にとある約束を伊達と交わしたシーンは、切ないながらも爽やかで心地良い気持ちに浸れてとても良いものでした。