SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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老後の資金がありません

[著者:垣谷美雨/中央公論新社]

 「家族や親せきが絡んだ“お金の問題”って、とことん厄介で面倒臭いなあ……」と、しみじみ思いました。当事者でさえなければ、喜劇のごとく眺めていられる状況です。一方で、もし自分が現実でこんな立場だったら精神的苦痛で病んでしまうかも……とも思わされる恐るべきリアル感もありました。

 正確には『老後の資金問題』ではなくて、『老後の為に貯めていたお金が激減して絶望問題』が主に描かれている“問題”です。主人公の50代母・篤子、一見お金の不幸が次々と理不尽に振りかかっているようで、実はお金が絡んだ時の立ち回りが不器用ったり下手だったりするよなあ、と言った具合。毅然とした態度を取りたくても肝心な場面で押しに弱い性格も含めて、篤子自身があんまり自覚なくて気付いていない所が問題だったのかも。

 余計なお金の問題山積みで結構疲れましたが、後半のやけくそ気味に吹っ切れた篤子の巻き返しで少しは気が晴れたかな、と言う手応えでした。特に義母・芳子とのやりとりの関係は、なかなか面白おかしく見せてもらえて良かったですね。