[著者:暁社夕帆/イラスト:フライ/講談社ラノベ文庫]
想像以上にガチな数学。青春恋愛メインの中の一要素、と甘く見ていると押し寄せる数学の波に圧倒される事になります。むしろ数学がメインと言っても過言ではなく、それだけこの物語が占める数学の割合の多さ、扱いの重要度の表れでもあると思いました。
主人公・数馬の『数学苦手』は、数か月後の劇的な成績急上昇に触れた後だと、「なんか嘘か誤魔化しだったんじゃないか……?」、と勘繰りたくなる程の不思議さでした。
どんなに教え方や学び方が上手くても、そもそも『苦手』『嫌い』『興味ない』ではここまで急激な成績上昇には至らないと思うので、元々数学自体が好きなんだけど成績を上げる方向に繋がっていなかった、と言う事なのでしょうかね。
物語は東大入試から卒業式まで描き切っていて、数馬と環、有理や圏との関係も上手くまとまっていて、爽やかな雰囲気が残る良い読後感でした。もし続きがあれば、ラストで断片だけ見えた有理と“彼女”の事をもっと追ってみたいかも。