SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ビブリオフィリアの乙女たち

[著者:宮田眞砂/イラスト:切符/星海社FICTIONS]

 森鴎外の作品『舞姫』に関わる事件を巡って、書籍と物語に対して『特別な能力』を発揮する二人の少女・文詠と花奏が『舞姫』に潜む謎と解釈を紐解き、そこに根深く絡んだ事件の真相を解き明かして行く物語です。

 文詠は『その本を最後に読んだ人の思念を読み取る』能力、花奏は『一度“聞いた”だけで物語の内容から作者が込めた隠された真意まで読み解く』能力。真相に至るには片方が欠けていてはダメで、二人そろっての相乗効果を発揮させた終盤の展開は非常に印象に残りました。

 個人的には作中の森鴎外や宮沢賢治の作品に馴染みが薄いせいか、中盤ちょっと難解だったと言うか、「今何を追っているんだっけ?」と、正直読みながら気持ちが迷子になったりする事も。

 もっとも、終盤で謎が解かれて行くと同時に、分かっていなかった事も気付けるようになるので、最後には「なるほど」と納得感と安堵感に浸る事が出来たのも確かです。

 ちょっと自分に自信が無くて頼りなさげな文詠が、絶対的な自信を持つ『物語の解釈』によって、とある人物に説得を試みるシーンは特に素晴らしかったですね。