SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ウィザーズ・ブレインV 賢人の庭<下>

[著者:三枝零一/イラスト:純珪一/電撃文庫]

 大多数の住民の命を守る為に、シティの安定稼働を優先して魔法士を『人柱』に使い捨て続けるべきか? 魔法士が強制的に背負わされる犠牲をなくす為に、シティの機能を強制停止させて多数の住民に被害が及ぼうとも、魔法士を『人柱』から救うべきか?

 どちらの主張にも『正義』があって、正反対の主張で向き合う相手は互いに『悪』となってしまう。特に今回のイルとサクラの死闘は、双方の代表者的な立場としてのぶつかりあいのように見えました。

 ひとつハッキリしているのは、たとえどちらが勝ったとしても、勝った側の主張が正義として通ったとしても、必ず『救われる人』と『救われない人』が出てしまうと言う事。全員が幸せな結末には“絶対に”ならない、と現実を残酷に突き付けられるようなエピソードでした。

 手を取り合って交わる事はないので、結局どこまで行っても平行線が続いてしまうんですよね。シティのマザーシステムを魔法士で補わなくて済むような画期的な代替案でもない限り、現状を打開するのは無理だと思います。

 ただそれでも、今回ラストの『役者は揃った』みたいな雰囲気を見ながら、「こいつらなら何とかしてくれるかも……」みたいな期待感が沸き上がったのも確かです。

既刊感想:IIIII、IV<上><下>、V<上>