[著者:三上延/イラスト:越島はぐ/メディアワークス文庫]
栞子さんが母・智恵子と再び関りを持つ事を求めて動き、それを大輔を通して見続けている内に、段々と最初の頃の智恵子の印象が変わって来ています。
かつて栞子さんの感情からしか見えてなかった母親像は『突然家族を捨てて姿を消した冷酷非情な人』だったんですが、色々な事件を経てこの巻を終えた段階では既にそうではなくなっている。
智恵子の『相手の動向を見て瞬時に本心を読み取る洞察力』のおぞましさは相変わらずながら、家族を残して消えた事に彼女なりの理由があったのは何となく察せられるようになったかなと。
事あるごとに栞子さんを試すようなまねをしているのも、単におちょくって楽しんでいるとかではなく、自分と瓜二つな性癖の娘に“自分と同じ道を辿って欲しくない”みたいな気持ちで成長を促しているから……なのかも?
まあ本心を容易に読ませない掴ませない人なので、腹の中で何を思い考えているのかは未だに見通せている気はしないですけどね。