[著者:中山七里/実業之日本社]
前回の『蒲生美智留』が『野々宮恭子』になり変わって、前回同様に“自分では全く手を汚さず”にターゲットに定めた相手を次々に破滅させて行く。
出世欲や名誉欲や承認欲求の増大は、こうも容易く大金に目をくらまされて身の破滅に追い込まれるのか……と、際限ない欲望と失墜からの破滅の落差に読んでいて目が回るようなくらくらとした気分に陥ってしまいました。
自業自得と言えばそれまでですが、各章とも読み出した時点で身の破滅が確定しているので、「ざまあ」と言う気持ちが湧くよりも先に、後味の悪い苦味と恭子の“仕留め方”に対してのおぞましさの方が浮かび上がってしまいました。
前回と比べて、恭子にしてはやけに表に立って目立ち過ぎかなと思っていたのですが、その違和感もエピローグで「そう言う事か」と納得出来ました。まあ正体不明さで言えば『彼女』の方が際立ってましたからね。