SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

田中家、転生する。5

[著者:猪口/イラスト:kaworu/ドラゴンノベルス]

 これまでエマとスチュワート家が関わって来た問題の中で、今回のやつは特大級に厄介な問題なのかも知れない。

 鬱に沈む事があり得ない程滅多に沈まないエマが、この問題に直面した瞬間に精神病んで撃沈してしまいましたからねえ。前世の『アラサーな容姿の制服着た自分=田中港』に異世界で向き合ってしまったら、そりゃ「ありえない!」と叫んで現実逃避したくもなる。

 本当に問題なのは、何故偽者の田中港が異世界に存在しているのか、原因や事情や解決の糸口がさっぱり見つからないと言う事で。多分、王国に攻め込んで来るらしい不穏な噂のある帝国が絡んでいるんだと思うんですが……。

 まあとりあえずエマの心身が持ち直してくれてホッと一息。ただ、偽・田中港問題はそのままで、未だ対処法が見えない中、果たしてエマがどう解決策を見つけて向き合って行く事になるのか。

田中家、転生する。4

[著者:猪口/イラスト:kaworu/ドラゴンノベルス]

 今度は皇国にまでその名を轟かせてしまうスチュワート家。皇国滅亡の危機に瀕する植物被害もなんのその、軽々と易々と討伐してみせる辺りはさすがと言うしかない。

 当人たちは『なるべく目立たないような言動を心掛けている』らしいけど、無意識に無自覚に“本人達は全くそう思っていない”言動の全てが目立ってしまってるんだよなあ。

 その事にすら気付いておらず、のん気に王族皇族貴族らと互角以上の成果を上げて渡り合ってるんだから、無自覚が極まっていてもうどうにもならん、と言う感じ。

 まあ苦戦してしまうのもスチュワート家らしくないので、こうテンポ良く事態解決に導いた上で自らの利益に変えているのを見て、「スチュワート家らしいなあ」って眺めていられるのは良い事なのかも。

フルメタル・パニック! ―サイドアームズ2― 極北からの声

[著者:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 カリーニンとマデューカスが主役と言う、熟年のベテラン職人から醸し出される『渋味』の匂い際立つような重厚かつシリアスな内容でした。この二人も長編ではあまり個人事情が語られる事もなかったので、過去を追憶するような重みのある雰囲気の描写は実に良い感じでしたよねえ。

 カリーニンは宗介との出会いのエピソード。ここまで深い縁と切り離せない絆がありながら、本編を思い返すとどうしても「何故?」と色んな思いが滲んでしまいました。ただ、世界是正の話が明確になった今、何となく理解出来たのは、カリーニン自身が全く手を出せずに喪った妻と子供が存在する過去を欲していたのかなあ、と。だから散々葛藤した末に、宗介やミスリルと決別する道を選んでしまったのかも知れません。

 マデューカスはトゥアハー・デ・ダナンの副長としてテッサの元に就くまでのエピソード。こちらはまず、これまであまりよく知らなかった彼の人となりを存分に知る事が出来て満足。あとは、長編で馴染みのある人達が過去に意外な所で意外な役割を担い、マデューカスと意外な出会いを果たしていた辺り、なかなかに興味深い所だったかなと。

 最後の一本は短編集ノリ的な感じだったのかな? 白トラの話は本当に本編で見逃しそうなくらいちょっとだけしか出て来なかったんですが、一応「どう言う事?」みたいな疑問で覚えていたので、まあなるほどここから繋がっていたのね、と言う感じでした。

フルメタル・パニック! ―サイドアームズ― 音程は哀しく、射程は遠く

[著者:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 長編では『ミスリル対アマルガム』の構図で広い規模のお話をやっていた為、あまり描かれる事のなかった、個人の事情やASの詳細や整備の事情などを掘り下げたエピソードによる短編集。

 長編の合間の出来事だそうで、全部終わってから読んでみると、サックスさんの話とかは「ああ……」って気持ちだったんですけどね。そう言えばASの仕組みや整備内容については、長編であまり詳しく見せる機会もなかったもかなあと。その辺り、整備責任のサックスから見たASの扱いの大変さを描いた内容はなかなか興味深いものでした。

 『マオのくんれん』は、まあ著者の方もあとがきで述べているように『趣味全壊』な内容でしたが、よくここまで詳細まで考え抜かれているなあと、さっぱり理解出来ないながら感心してしまいました。

 テッサの温泉旅行のは、あれは短編集のノリだったんでしょうかね。まだ読んでないので詳しくは分かりませんが、シリアス重めな長編とは全く雰囲気が異なっていて新鮮な感じでしたかねえ。

フルメタル・パニック!12 ずっとスタンド・バイ・ミー(下)

[著者:賀東招二/イラスト:四季童子/富士見ファンタジア文庫]

 もしも、世界が是正されたとして、本当は死ななくても良かったはずの人が誰も死なずに済んでいたとしたら、あるいはそれもありだったのかな、と。かなめが垣間見た『幸せな家族の食卓』『幸せな学校生活と恋愛』の夢を目の当たりにして、そんな風に思わされてしまいました。

 でも、最終的に選び取った道はそうはならない道……過去は変わらず、未来は手探りで分からないまま、今現在を生きて行く、そんな日常を宗介とかなめは掴み取りました。

 このラストシーンの結末の風景、正直最後の方まで到底叶わないものだと思っていて、それ程絶望に満ちた限界ギリギリの死闘だった事を思い知らされました。

 それだけに尊くてかけがえのないもので、ここまで辿り着かせてもらえた事に心底「ありがとうございました!」と、感謝と喜びと嬉しさで一杯に満たされていました。