SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

冤罪犯

[著者:翔田寛/KADOKAWA]

 現在捜査している女児誘拐殺人事件は、まるでそっくり再現されたかのような7年前の『模倣』なのか?

 その7年前の事件が掘り起こされたと共に浮かび上がった、過去に関わった警察関係者を震撼させる実行犯の『冤罪説』の真偽は?

 現在と過去から捜査を続けて、“見えざる接点”を徹底追究しながら事件の真相に迫って行く、と言った展開。

 長丁場な内容ながら途中で飽きさせずダレさせず。行き詰まった所で起死回生の発見があったり、意外な所で思わぬ手掛かりを掴んだり、予想外な出来事の遭遇から会心の閃きが生まれたり、非常に見応えがって面白かったです。

 特にタイトルにもなっている7年前の『冤罪疑惑』は、真偽をなかなか掴ませてもらえずやきもきしながらも、強く物語に引き付けられる要素だったかなと。あと、印象に残ったのは最後の香山の被疑者への『追い込み』でしょうかね。曲者相手に徹底的に読み抜いた卓越した話術はお見事でした。

W県警の悲劇

[著者:葉真中顕/徳間書店]

 事件の中に仕掛けられている『意外な展開、意外な結末』がテーマの短編集。タイトル通り、どれも『W県警』内での出来事で、各エピソード間に様々な人間関係が意外な所で絡んでいるのも本作の特徴と言える所。

 どれもなるほど意外性があって絶妙に捻りが利いた展開で面白いものでした。個人的に特に気に入ったのは第二話の交換日記で、思わずそこだけ再読してしまうほどに「あっ」と意表を突かれる展開で印象に残りました。

 あと、人物で特に印象的な所を挙げるとしたら女性警視の菜穂子かな。警察組織で『女性蔑視』を改革しようと言う意気込みや上昇志向に、ちょっとした“危うさ”も抱いていたもので、まあこの辺は割と予感的中と言った感じだったでしょうかね。

 ネタバレ配慮で一応伏せますが、まさか最も猟奇的な『彼女』がラストでこんな風に関わってくるとはね……背筋が凍りましたが、何故か意外と後味は悪くなかったです。『彼女』の凶行に対して、納得出来る一種の正当性を感じられたから、だったのでしょうかね。

いけない

[著者:道尾秀介/文藝春秋]

 各章に事件や謎が描かれ、各章の最後に提示されている『一枚の絵や画像』が、それまで描かれた謎を解く重大な鍵となっている、みたいな構成のお話。それぞれの章が関連し合い、最終章に全てが繋がるような流れです。

 しかしこれ、個人的な意見で述べるなら、完璧に謎を解読するには『読み手側に相当なレベルの読解力や理解力が必要』だと思いました。

 正直、最大ヒントの絵を見せられても頭の中が「???」で覆いつくされてました。いや、まあ何となく「こうじゃないかなあ」って全く自信が持てない程度の理解は出来てた気がするんですけどね。

 結局読了後に『いけない ネタバレ』検索で、考察サイトに頼っちゃいました。結果「そういうことだったのか!」と納得出来ました。こりゃ自分の頭じゃ理解出来ないわけだわ。

シャイロックの子供たち

[著者:池井戸潤/文藝春秋]

 メガバンク内での訳あり銀行員達が繰り広げる、ドロドロに歪み腐り切った人間関係と薄汚い出世欲に塗れた物語。

 『もしも本当にあったら怖すぎる話』『知らなかった方が良かった話』的な、でも実際本気でこう言うのが銀行内であり得そうで、その現実味に鳥肌総立ちの背筋が凍るような震えに苛まれてしまいました。

 最終的に、舞台である銀行が隠ぺいした不正を白日の下に晒して、パワハラ塗れのクソクズ上司どもを一掃出来た事に対しては胸のすく思いでスッキリ出来ました。

 ただ、真相の中心地にいた“彼”についてはもやもやしたものが残るものでしたが、それでもこう言う終わり方にするのもやむを得なかったのかなあ、と。

 不正を暴いてズバッと解決、とかだったら後腐れなくて良かったんでしょうけど。まあ結局彼自身も決して清廉潔白なわけではなかったですし、フェードアウトで締めるのが一番しっくり来るのでしょうかね。

コクーン

[著者:葉真中顕/光文社]

 『バタフライエフェクト』が主なテーマ。一羽の蝶の『ひと羽ばたき』が、巡り巡って地球の裏側で大きな影響を与えるようなもので。

 そこをなぞる様に、とある人の言動が全く別の人物や状況の変化を大きく揺り動かし、複雑に登場人物や物語が絡み合って行くような内容でした。

 相関関係の紐解きが鮮やかだったかと言えば、正直そうでもなかったような手応えで、最後まで割と曖昧かつぼんやりとした繋がりだったような印象。

 それでも、要所要所で「これは!?」とハッとさせられる気付きを仕込んでいる辺りは、なかなかの読み応えで面白かったです。

 過去の某宗教団体テロや大地震を思わせる部分は、やはりと言うか意識的に盛り込まれたもののようで。ラストで著者の仕組んだ意図に気付かされて『なるほど納得』と言った具合でした。