SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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新任警視(上)

[著者:古野まほろ/新潮社]

 前任警視の不審死の謎と、その殺人事件に関わるカルト宗教団体の実態と闇に、新任警視の司馬が挑む。

 ……とは言え、この上巻ではラスト付近までほとんど事件に関わる描写がなく、加えて事件の進展も事件の謎やカルト宗教の実態に迫るでもなく、早い展開を望むとすれば結構な足踏みを強いられる事になります。

 じゃあ一体何が語らていたのかと言えば、司馬が着任した警備課を始め、警察署内の役職・役割分担・部署内間の関係・人間関係……などの警察署の実態を、とにかく設定の細部に至るまで説明し尽くす、と言ったものでした。

 あとは司馬の警視としての立ち振る舞いや、『責任を負う』と言う心構えなどの気持ちの揺れ動きにページが割かれていた印象です。

 まあとにかく「なかなか事件の本質に辿り着かないなあ」って気持ちでしたが、この警察署内の圧倒的物量の描写が、下巻で触れられるであろう事件解明に大いに影響を与えてくれる事に期待したい。