SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

朽ちないサクラ

[著者:柚月裕子/徳間書店]

 警察関係者でありながら、実質警察官ではなく事務職員に過ぎない泉が、果たして友人の死の真相に辿り着けたとして円満解決を手に入れられるのか? ここをどう描くのかが、最初の段階から気になる所でもあり楽しみな所でもあり、と言った感じでした。

 いくら刑事の磯川の協力を得て情報を集めて推理を展開しようとも、泉の立場的に踏み込める限界の線があるわけで。その辺りを思い返してみると、上司の富樫や刑事課の梶山など協力者に恵まれていたなって思います。おそらく、彼らの気持ちを動かしたのは、泉が発する『警察官の資質』を感じ取ったからなのでしょう。

 真相語りは、事前に心構えはありましたがやはり泉の限界を痛感させられるものでした。暴かれたものが真実であったとしても、どうにもならないものだったから。それでも、たとえ納得出来なくて涙を滲ませたとしても、最後に泉が前向きに進んでくれた事は幸いだったかなと思いました。