キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った

[著者:比嘉智康/イラスト:はっとりみつるファミ通文庫]★★★

 ずっと多人数でわちゃわちゃやってるなあ、とい
う印象で。正確には二人の多重人格者が計7人を演
じていたわけですが。本来、抱えていれば異常に見
えてしまうものが至極正常のようで、当たり前のよ
うに穏やかで賑やかしい日常が流れてゆく。ずっと
途切れる事無く続いていけばいい、と望みながらも
頭の片隅では「そうはいかないのだろうな」と、目
に見え難い不安定さを感じたりもしていました。
 最初の内は、多重人格が崩壊するのは市川櫻介で
はないかと思っていましたが、重責を背負っていた
のは彼女の方でしたね。終盤、“彼女”の柔らかな
口調での怒涛の告白は圧巻でした。「てきてよ」、
最後にこんな使い方されたら堪らないですよね。