[著者:津谷一/ダイレクト出版株式会社]
『誰が自殺に見せかけた殺人を犯したのか?』の“真犯人探し”から、徐々に『何故この不審死が発生したのか?』の“事件背景”についての描写を重視するような、興味の主軸が移行してゆくような感触の展開でした。
その“事件背景”こそがこの物語の大きな見所で、現実世界の国内政治や諸外国交流を強く意識させられる内容に、思わず「実際に現実でも起こり得るものかも知れない」と漏れ出てしまいそうなリアルをぶつけられているような感じでした。
上巻は不審死の被害者・岡本が述べた『結界』の意味と、何者かに強奪された日本の機密研究の産物『SS-8』の核兵器を意識させるモノの繋がりから詳細の判明まで。
個人的には、佐々木に付き従う慶子の存在が妙に気になって仕方がない。岡本が愛した女性の聡明さが「彼女は要警戒」と佐々木に告げるほどで、話が進むに連れて“有能過ぎる”所にも“臭う”と思わされてしまう。
佐々木はベラベラと事件の詳細を話しまくってるけど大丈夫なんだろうか? まあそんな風に誘導されているのかも知れませんが、いずれにしれも只者じゃない気がする慶子の雰囲気には要注目したい所です。