SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

結界(下)

[著者:津谷一/ダイレクト出版株式会社]

結界(下)

結界(下)

  • 作者:津谷 一
  • ダイレクト出版株式会社
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 素性を怪しんでいた慶子さん、やっぱり只者じゃなかったわけですが、しかし佐々木にとっては何とも言えない状況に追いやられたりで……最悪スパイみたいな敵対者を想像してたのですが、その悪い予感だけは外れてくれたのは幸いだったかな?

 ただ、この下巻の展開と言うのが、慶子の素性なんぞ些細な事と言わんばかりの怒濤の展開で、もう最後まで息つく暇もない面白さで駆け抜けた感じでした。

 奪われた『SS-8』の奪還作戦では、自衛隊投入の隠密作戦からの敵殲滅銃撃戦の派手さがあり、一方でそれに続く黒幕的敵対国家が判明してからの政治的駆け引きでは、精神的重圧が半端ない腹の探り合いと頭脳戦が繰り広げられる。

 敵対国家の描き方を見て「フィクションながら思い切って踏み込んでたなあ」って印象で、現実なら陰謀論として鼻で笑われそうな部分を、妙にリアルで「実際にあり得そう」と思わせる描写に凄味が感じられるものでした。

 最後の最後は非常に苦味の混じる結末でしたが、高島総理や岡本が仕掛けた先の先の『敵対者への欺き』が、どうか妄想ではなく“本当の事”であって欲しい、と強く願わずにはいられませんでした。

 あと佐々木の末路に関してだけは、「もしかしたら……」の僅かな希望もなくはないので(高島総理なら裏でそれくらいはやってのけそうだし)、本書で示された通りではない、と思っておくことにします。

既刊感想:(上)