SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

平浦ファミリズム

[著者:遍柳一/イラスト:さかもと侑/ガガガ文庫]★★★

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

平浦ファミリズム (ガガガ文庫)

 第11回小学館ライトノベル大賞『ガガガ大賞』受賞作。

 「赤の他人に頼らず生き続けたい?」と「誰にも
頼らず生きて行ける?」の、似て非なる問い掛けを
両方同時に一慶を通して喰らわされたような、そん
な気分でした。どんな返事であっても前者は即答、
後者はつい躊躇ってしまう、きっとそこには理想と
か現実とか横たわっているからなのでしょうかね。
 一慶個人の問題と、あとは平浦家について。これ
だけ個々に決して軽くない問題を抱え続けていて、
よく家庭内不和やら家庭崩壊やら起きなかったもの
だなと。いや本当に。まあ一慶からすれば、「一方
的な価値観を勝手に持ち込むな」となりそうですけ
ど。そこに居なくても多大な影響力で今も尚繋ぎ続
けていてくれる。とても素敵な事だと思いました。

世界の終わりに問う賛歌

[著者:白樺みひゃえる/イラスト:須田彩加/ガガガ文庫]★★

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

世界の終わりに問う賛歌 (ガガガ文庫)

 第11回小学館ライトノベル大賞『審査員特別賞』受賞作。

 途中まで凄く面白かったのに、何で戦争話をメイ
ンにしちゃうかなあ。元々は主な生活エネルギーで
ある魔力抽出と拷問とを掛け合わせ、実現出来てい
ない長期運用方法を模索しながら進められていた筈
なんですよ。それなのに、戦争へ転換してヘレナが
軍事利用される様になってしまったら、そこまで積
み重ねてきたものが何の意味も無くなってしまうじ
ゃないですか。長期運用の拷問方法を、ブルクハル
トが試行錯誤していたのは一体何だったのかと。
 ヘレナが戦争に利用される前提で話が進んでいた
ならば、それはそれで別種のブルクハルトの葛藤な
ども見られたでしょうし、楽しめたと思うんですけ
ど。途中の方向転換はちょっと頂けませんでした。

スクールジャック=ガンスモーク

[著者:坂下谺/イラスト:巖本英利/ガガガ文庫]★★★

スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)

スクールジャック=ガンスモーク (ガガガ文庫)

 第11回小学館ライトノベル大賞『優秀賞』受賞作。

 機巧外骨格の設定はとても魅力溢れるものに映り
ましたが、それ以上に主人公とヒロインとかつて恩
義を受けた上司を中心とした人間ドラマの描写が素
晴らしかったです。ぐいぐい惹き込まれました。
 機巧外骨格は見せ場はありつつも割とあっさり把
握し易い描写に徹していて、メインを張るよりは傍
らで物語を引き立てる役割という感じだったでしょ
うかね。ともすれば、機巧外骨格の設定や見せ方に
物足りなさを感じてしまう部分もあるかも知れませ
んが、それを充分補うだけの魅力がストーリー展開
の中に沢山盛り込まれていたんじゃないかなと。
 連理が終章で“たった一日”と思い返すのに触れ
て、改めてこの物語の密度の濃さを感じました。

物理的に孤立している俺の高校生活2

[著者:森田季節/イラスト:Mika Pikazoガガガ文庫]★★

 過去の業平の話を聞いていると、周囲が一般人で
自分だけ異能力者な状態だから敬遠されていたよう
な。ドレイン能力であろうがなかろうが、何らかの
異能力持ちだと知られた時点で一般人からは弾かれ
てしまうものなのかなあ、と思ったりもしました。
 異能力者のみで構成されている高校生活は、それ
に比べたらまだマシなのかも知れません。少なくと
も同じ異能力持ちとして、近寄れない以上止むを得
ず孤立状態を保つしかない、と業平の異能力の厄介
さを理解して貰えている筈ですから。受け留めて貰
えるかどうかはまだ別問題ですが、業平が孤立して
難儀しているようで、それ程ネガティブな雰囲気に
陥らないのは、その辺りが影響しているのかな?

既刊感想:

キモイマン2

[著者:中沢健/イラスト:荻pote/ガガガ文庫]★★

キモイマン 2 (ガガガ文庫)

キモイマン 2 (ガガガ文庫)

 前巻から8年後の、キモイマンの中の人こと高寺
一郎のお話。学生時代みたく、己の鬱憤を発散する
為に気軽に正義のヒーローは気取れず、従ってキモ
イマンも過去の栄光・思い出と化していました。
 苛めによる胸糞悪さもなければ、社会人になって
落ち着いたのか一郎の妄想癖による気持ち悪さも失
せていて、キモイマンも既に思い出の彼方。底辺社
会人の世知辛さばかりが浮き彫りになり、すっかり
毒々しさやイロモノ感が抜けちゃった印象でした。
 その分気持ちがざわつく事もささくれ立つことも
無く、割と平静でいられたのかなあ。もし続くよう
なら、今回の事件を機にキモイマン活動を再開して
欲しい気持ちもありますが、どうなるでしょうね。

既刊感想: