[著者:辻村深月/朝日新聞出版]
自分の中で育て上げて来た『本質的な部分』を、自分自身の手で根底から覆すには、自分自身でも想定していなかった想定外の突飛な行動を“衝動的に”取るしかないのかも……と、本編後半部分の真実の事を追いつつ思ったりしていました。
タイトルにある『傲慢』と『善良』は、よく対比表現として本編の中の主人公・架の感情から表現されています。
例えば、自分にとって「傲慢だ」と思う相手の言葉や態度が、相手にとっては『善良』を示していたのかも知れない。それは逆もそうであって、『誰にとって何が傲慢で善良か』と言う所は、非常に深く考えさせられてしまう物語でしたね。
正直、架の側から追っていた真実には恐怖すら覚えていたのですが、真実の側から彼女の『本質』が根底から変わろうとしている様子に、じんわりと心に染み入るものを与えてもらえて安堵の息がこぼれました。