SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

あまのじゃくな氷室さん 好感度100%から始める毒舌女子の落としかた

[著者:広ノ祥人/イラスト:うなさか/MF文庫J]★★★

 第13回MF文庫J新人賞『審査員特別賞』受賞作。

 「どうすりゃいいんだよー!」の愛斗の悲痛な心
の叫びが響き渡る。そして、限界突破で果てしなく
「面倒臭い」性質の氷室さん。混沌とした状況が極
まり過ぎて、何か読みながらどう表現すれば良いの
か分からない複雑な表情で笑うしかなかったです。
 こんなメインヒロインにはあんまりお目に掛かれ
ません。それだけ涼葉は強烈に印象に残るキャラで、
愛着よりもまず先に、「心底めんどくせえ」という
印象ばかりが際立つ描写は凄いなと思いました。
 本音が見えない限りは、雅の言い分の方が正論な
んだよなあ。ただ、こっちには愛斗と同様に真意が
見えてるから非常に困る訳で。何とか愛斗には真っ
当な涼葉の本音を表で聴かせてあげたいですよ。

ポンコツ勇者の下剋上

[著者:藤川恵蔵/イラスト:ぐれーともすMF文庫J]★★

ポンコツ勇者の下剋上 (MF文庫J)

ポンコツ勇者の下剋上 (MF文庫J)

 第13回MF文庫J新人賞『審査員特別賞』受賞作。

 一体何処が優れているんだろう? と、必死に考
えてみても一向にそれらしきものが思い浮かんで来
ない、奇妙な雰囲気を醸し出す主人公のクロウ君。
 勇者を探して何か行動を起こす度に、気付けば過
程はともかく結果的には何となく良い方に転がって
くれている。とてもクロウの行動から、明確にこれ
だと言える成功要因が見付けられなくて、基本何を
するにも消極的のダメダメ野郎の筈なのに、掴み所
の無い魅力が感じられるのも確かなんですよねえ。
 終盤の死を躊躇わない覚悟の発言は、クロウが持
つ天性の才覚なのか、それとも単に投げ遣りだった
だけなのか。ちょっと判断に迷う所ですが、周囲の
不信感を捻じ伏せる凄味はなかなかのモノでした。

せんせーのおよめさんになりたいおんなのこはみーんな16さいだよっ?

[著者:さくらいたろう/イラスト:もきゅ/MF文庫J]★★

 第13回MF文庫J新人賞『佳作』受賞作。

 このじじい、あたまおかしい。『合法ロリ』って
言葉がごく自然に当たり前のようにまかり通ってい
る現実って、なんかすげえなとか思わされました。
 主人公の利孝に謎解きの使命が課せられていた為
(もうその内容についてはこの際深く言及しません
けど)、どうなるのかなあって興味はありました。
 女の子達の表情がとにかく可愛く描けていた効果
もあって、その興味は最後まで持続してくれたので
すが、謎解きと結末に関しては、利孝以外のその場
の皆に同意で「なんじゃそりゃ!」となりました。
 でも、利孝の言い分も凄く良く分かるし、真の狙
いにも成る程となりましたし。思惑通り事が運んだ
からには、きちっと答えを見出して欲しいですね。

絶対彼女作らせるガール!

[著者:まほろ勇太/イラスト:あやみ/MF文庫J]★★

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

絶対彼女作らせるガール! (MF文庫J)

 第13回MF文庫J新人賞『優秀賞』受賞作。

 ヒロインの超常現象的な特殊能力の恩恵頼りに話
が進むのかと思いきや、案外“掌に願い事書き書き
で成就”の要素が頻発する事は無かったですね。
 むしろ絵馬の特異過ぎる性癖による追い込みが余
りに過激で、序盤で印象に残っていたその事がすっ
かり頭から抜け落ちてしまっていました。忘れた頃
にここぞの場面で切り札的な扱いだったのは、凄く
いいなと思えました。結局絵馬の能力は本物なのか
偶然が積み上がっただけなのか、ハッキリとした回
答は得られませんでしたが、大地にとって効果が発
揮されたのならば、その辺は些細な事なのかなと。
 主人公の好意がメインヒロインに向かなかった状
況から、続きがどうなるのか見てみたいですね。

僕の知らないラブコメ

[著者:樫本燕/イラスト:ぴょん吉MF文庫J]★★

僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

僕の知らないラブコメ (MF文庫J)

 第13回MF文庫J新人賞『最優秀賞』受賞作。

 とても奇妙な感覚でした。何故優太の身に未来跳
躍の能力が備わったのか? この謎が残されたまま
で話が進んでいるのも原因のひとつでしょうけど、
自分自身の事で身に覚えの無い現状こそが、最も座
り心地に違和感を抱いた要因なのだと思います。
 まず嬉しい気持ちが来る前に、「何故?」を真っ
先に浮かべてくれた優太を見て正直ちょっと安堵し
ました。初っ端から人生投げ棄てたかのように割と
腐り切っていた上で、更に特殊能力を得て「ラッキ
ー!」とか浮かれてたらホントどうしようかと。
 まあそれにしても、何とも居心地の良くない状況
だったなと。一体何処に落とし穴があるのかと、あ
まり味わいたくない方のドキドキで胸一杯でした。