SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

楽園ノイズ

[著者:杉井光/イラスト:春夏冬ゆう/電撃文庫]★★

『面白い』と『好き』と『合う』
 音楽パートに関しては、専門分野とか趣味的なモノを全力全開で色濃くぶち込みました、的な描写だったので、事前に予想はしてましたがちょっと付いて行けない所は正直ありました。こればかりは物語が面白いかどうか以前に、『好きか嫌いか』『合うか合わないか』の問題なので仕方の無い所ですね。

意欲と熱量には圧倒される
 ハマる人には見事にハマるが、ハマらない人には全くハマらない。中途半端は無く真っ二つに割れるんじゃなかな、とも思いました。個人的にはどうしても後者寄りになってしまう。ただ、裏を返せば趣味が合う人をとことん惹き込む内容でもあると言う事。徹底的に好きな音楽を描く、その圧倒的な熱量は、ハマらずとも思わず魅入ってしまう程。

日和ちゃんのお願いは絶対

[著者:岬鷺宮/イラスト:堀泉インコ/電撃文庫]★★

日和自身の事について実はあまりよく分かっていない
 日和に『絶対に願いが叶う』能力が与えられたのは何故? 何時から? 原因は? など。特殊過ぎる立場に置かれている日和の状況があまりに強烈な印象で、割と根本的な事情が実はほとんど語られていない事に目が向き難い。思い返すと、そういえばあれもこれもと日和の疑問点が積み重なって行く。

深春はこれから知って行く事になるのだろうか?
 日和と『天命評議会』の関係についても同様に、先に事実のみが語られていて、どんな経緯を辿って今の状況に置かれているのかは分からない。ただ、深春の視点ならこう言った見せ方が合っているのかも知れない。彼にはこんな風に見えていた筈だから。危険を承知で日和と共に歩む決意をした事で、彼女の事情の深い部分も見えて来るでしょうか。

中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる

[著者:弥生志郎/イラスト:吉田ばな/講談社ラノベ文庫]★★

詳しい事情をうまく呑み込めないまま理不尽に晒されるような
 ヤリマンビッチな結衣の『虚偽の噂』が、何でここまで修復不可能な程燃え広がった挙句に、ずっと改善されず放置されっ放しなのか? 里久と付き合う付き合わないの話の前に、ここが曖昧でハッキリしないので、何かもやもやした気持ちが払拭されなくて困った。

 これだけ大事なら教師達の耳にも届いているだろうし……結衣が現状維持を望んで巧く立ち回ってたんだろうか? その辺の事情は結衣の口から詳細まで語られなかったので気になる所です。

『結衣の為』に爆発させた里久の本音が胸に響く
 理不尽な噂に翻弄され、大っぴらには付き合えず、何も悪い事してないのに息苦しさだけを覚えるような感じでした。なので、事情は全て把握出来ていないながらも、最後に好転してくれて少しホッとしました。

快感学校のボーイ×ミーツ×ガールは、えっちなバトルが始まっちゃうらしいですよ?

[著者:清水苺/イラスト:神岡ちろる・潮一葉/講談社ラノベ文庫]★★

実現不可能な願いを叶える魔法
 自分の身代わりに命を落とした恋人を生き返らせる為、異空間で“より相手に性的興奮を与えた者が勝利する”『エロバトル』に挑む……と書くと、当然ながら「なんのこっちゃ?」となりますよねー。

エロと勝負の駆け引き
 そもそも『死者を生き返らせる』願いが叶う、と信じてる時点で常軌を逸している。更に異空間でエロバトルとか、気が狂ってるとしか言いようのない状況。しかしながら、主人公の魁人を含め自身の願いに相当歪んだ執着を持っている為、意外に真剣で緊迫した勝負が見られます。エロ描写は全体的に割と軽めなので、自分が勝利する為に誰を蹴落とすか、どのタイミングで切り札のアイテムを使用するか、などの駆け引きの方に見所が多い印象でしたね。

シンデレラは探さない。

[著者:天道源/イラスト:佐伯ソラ/講談社ラノベ文庫]★★

掴み所のない女の子だと思っていたが……
 主人公・荒木陣の視点から眺めていて、真堂礼というクラスメイトの女の子は、第一印象として『とても距離感が掴み難かった』。一見クールで無感情、しかし時折妙に陣に関心や興味を強く示したり、不意を突かれて焦って冷静さを欠いたり、「どれが本来の素顔?」って掴みかねるような感じでした。

女の子がずっと見続けていた彼の方が掴み所のない存在だった
 そんな礼に対して抱いていた認識の『ズレ』みたいなもの。実は彼女がズレているように見えていた陣の方こそ、他人とはズレた感覚を持っていた。だから陣の視点で礼との距離感が掴み難かった。自分で自分の事は気づき難く、他人との付き合いや指摘によって初めて気付かされる。陣にとって『与えてくれた』相手が礼だったと言うわけですね。