SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

死にたがりの君に贈る物語

[著者:綾崎隼/イラスト:orie/ポプラ社]

 本作の鍵となる作家『ミマサカリオリ』の唯一にして最高傑作、『Swallowtail Waltz』とは、一体どんな内容の作品だったのか? ファンたちの『物語の追体験』が物語の本筋を担っていたので、あらすじや雰囲気はから何となくは察せられます。ただ、なにがここまで読者を惹きつけるのか? 作品と作家を魅了してやまないのか? 展開的に深く掘りさげる所ではないんですけど、どうしても『Swallowtail Waltz』の詳細は気になっちゃいましたよね。

 本題は、作家の死と未完の作品、その残された不可解な謎を追って行くというもの。誰が『ミマサカリオリ』なのか? の部分で、大いに興味を引っ張っていってくれる。途中で大体絞られては来るんですが、その先で今度は『ミマサカリオリ』自身の事情や、追体験参加者たちの裏事情を明かして、ぐいぐい先へ先へと推し進めてくれる。最後の最後まで目が離せませんでした。

 この作品を読んでいて、ふと現実に気持ちを戻して、「自分には今までこんな熱狂できる作品や作家さんに出逢えてたかなあ?」とか考え込んだりしてました。多分あったとは思うんですよね、記憶が薄れてるだけで。ここまでハマり込んでしまえる作品あるいは作家さん、少しでも多く出逢ってみたいものですね。