SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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オーデュボンの祈り

[著者:伊坂幸太郎/新潮社]

 現在の日本国内で、外部との接触を一切断った『鎖国状態』の有人島が存在する、と言われたらあなたは信じられるか? と、最初は受け入れる準備も出来ないまま、いきなり問い掛けを突き付けられたような感じでした。

 実際に主人公の伊藤の追体験をするように、いきなり目覚めて島に上陸していた所から、鎖国島の様々な人間関係と情景を知って行く事になります。最初は「絶対に違和感とか不自然さがあるだろう」とか「なんか大きな仕掛けでもあるんだろう」なんて思ったりするわけです。

 ところが、伊藤が抱いた大体の違和感や不自然さに対して、反論出来ない説得力を持たせながら納得の行く答えを示してみせる。ここが特に興味深い所だなあと強く思わされました。『人の言葉で真実を告げるカカシ』なんて、通常は現実として受け入れられないでしょう? これを伊藤と同様に受け入れられてしまう世界観が面白いんですよねえ。

 途中から『探偵役』を担わされた伊藤の謎解き、島全体の謎と真相、腐れ外道の城山の処遇、どれも納得の行く展開・結末を見せてくれていて、最後まで見応え満載でした。