SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

小説の感想を日々書き連ねるブログ

ホワイトラビット

[著者:伊坂幸太郎/新潮社]

 完成した一枚の絵が『全ての結末』だとして、その絵をバラバラの“かけら”にしてパズルのように一から組み上げて行く。まあ「物語って大体そんなもんでしょ?」と思うんですが、この物語は組み上げる過程の『設計図』のような、計算されつくした構成がとにかく絶妙で凄く面白かったんですよね。

 最初の内は誰のどんな行動がどこに影響しているのか、当然ながらさっぱり分からない。その時は隣り合うパズルのピースを探しているような感じで、互いの接点が見つかり繋がった時に「はっ!?」とした気付きが得られる。特に終盤はその気付きの連続で、繋がりを知った時に驚きと喜びでニヤリとし続けながら読みふけっていました。

 あと特徴的だったのは、地の文で『著者視点』の忠告だったり注釈だったり横槍だったり、ちょくちょく読者への誘導役として顔を出しているのが印象的でした。この特有の雰囲気と、登場人物達の喜劇みたいなドタバタ騒動で、陰鬱になり得そうだった誘拐立てこもり騒動も、割と軽快な要素が強めな手応えで楽しめたかなあと言う感じでしたね。