SIDE ONE ~小説の感想を日々書き連ねる~

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境界線

[著者:中山七里/NHK出版]

 『護られなかった者たちへ』の主要人物、笘篠刑事が再登場。一応続編的な位置付けですが、物語自体は独立した内容でした。

 東日本大震災で行方不明となって7年経った、笘篠の妻が遺体となって発見される。しかしそれは全くの別人で、戸籍と身分を偽っていた事が発覚した事によって、今回の話が立ち上がる、と言ったもの。

 フィクションと断りが入りつつも、東日本大震災が残した計り知れない爪痕や傷痕は、非常に現実味あふれる真に迫る描写の数々でした。戸籍売買や殺人などの事件的な話はフィクション、東日本大震災の犠牲者の背景はノンフィクション、みたいな感じで。

 ただ、どんなに伝聞で詳しく知ったとしても、決して『部外者』には『当事者』の思いの全てを理解出来るものではない、と本書を通じて痛感させられました。